2011年12月24日土曜日

第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい


マルコム・グラッドウェル

第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい


理由はわからないけど「これだ!」と思ったり、

説明できないけど「なんか変」と感じたことはないだろうか?

しかも一瞬で。

人間には、理屈を超えてわかったり、感じたりする瞬間・能力がある。

心理学で注目を集める『適応性無意識』である。

本書ではそれを『第1感』(原題はblink=ひらめき)と命名した。

「五感」を想定した「六感」ではなくて、「五感」の前にある無意識の反応を指す。

医療においても、救急で検査に異常がなくても、この患者は何かヤバイと感じたり、

理論的には説明しにくい感じでぱっと診断が浮かんだりすることが

まさに『第1感』と言えると思います。


第一感=直感が無視できないことは経験的にもわかりますが、外れることも多々あります。

どうしたら、第一感を伸ばすことができるのか?

どうしたら、有効な第一感と無効な第一感を見分けることができるかの?

を知りたかったですが、その辺には言及が及ばず、残念でした。


以下要約

輪切りの力=

短時間に輪切りした断片を、特殊な視点を通して処理することにより、瞬時に判断することができる。

しかし、その特殊な視点が何ののかは、無意識的であり、意識できないことが多い。


その無意識的な特殊な視点は、意識しようとすると逆にうまく働かなくなったり、

見た目といった他の情報に左右されやすかったり、

情報が増えるたりストレス下だと逆に間違えたりする。


無意識的な特殊な視点を持ったプロは短時間で判断できるが、

プロでないものは短時間では判断できず、

結果、プロと大衆の判断は分かれることがある。


プロが行う適応性無意識には、さまざまな限界があるが、

それでも、短時間に優れた結論に達するには有効な手段の一つである。

その多くは無意識下に行われ、意識することは困難であるが、

知識と経験の積み重ねで培われると考えられ、そういった人の第一感は、無視すべきではない。

2011年12月9日金曜日

スイッチ!


チップ・ハース、ダン・ハース

スイッチ!

『アイデアの力』が好評であったハース兄弟の著作です。

どうやって変化を起こすのかに関する内容です。

目新しい内容ではないですが、

わかりやすいフレームワークで展開され、

内容がすっと頭に入ってきます。

『感情=象で比喩』『理性=象使いで比喩』の両面をわけて

方法論が展開している点が優れていると思います。


以下、要約です。

どこかの誰かが行動を変えなければ、何も変わらない。

それは、あなた?あなたのチーム?まずはその人物を思い描こう。

誰もが感情的な『象』の一面と理性的な『 象使い』の一面を持っている。

その両方に訴えかけよう。

『変化』 できない理由は3つ

(1)相手の行動を変えるには、その人の環境を変えなければならない
(その人が原因ではなくて、変化できない環境が原因なのだ)
(2)怠けているのではない。じつはつかれきっている場合が多いのだ
(3)抵抗しているのではない。じつは戸惑っている場合が多いのだ


それでは、変化を起こすための3つのステップです。

Step1:象使いに方向を教える

(1) ブライト・スポットを手本にする;うまくいっている部分を探し、まねしよう
(問題点ではなく、解決策に目を向ける)

(2) 大事な一歩の台本を書く;全体像で考えず、具体的な行動を考えよう
(選択肢が増えると動けなくなる。新しい行動を具体的に)

(3) 目的地を指し示す;目的地はどこか、そこへ向かうメリットは何かを考えれば、変化は楽になる
(ごまかしようのない白黒の目標)


Step2:象にやる気を与える

(1) 感情を芽生えさせる;知識だけでは変化を起こすには不十分。感情を芽生えさせよう
(肯定的幻想をもたせ、燃える足場を認識させ、ポジティブシンキング)

(2) 変化を細かくする;象をおびえないくらいまで、変化を細分化しよう

(3) 人を育てる;アイデンティティを養い、しなやかマインドセットをはぐくもう


Step3:道筋を定める

(1) 環境を変える;環境が変われば行動も変わる。したがって、環境を変えよう

(2) 習慣を生み出す;行動が習慣になれば、象使いの負担はなくなる。習慣を促す方法を探そう
(アクショントリガーを設定する)

(3) 仲間を集める;行動は伝染する。行動を広めよう

2011年11月25日金曜日

科学哲学の冒険


戸田山 和久

科学哲学の冒険―サイエンスの目的と方法をさぐる


さて、医学という科学はどのように正当化されるのか?

西洋医学と東洋医学、はたまた占い、まじないとはどう差別化されるのか?

真実など知りようはなく、所詮、信念に過ぎないのか?

そういった疑問の答えを得るために読んだ、科学哲学の入門書です。


まずは、演繹帰納の説明から入ります。

演繹とは、『AならばB、A、ゆえにB』(モードゥス・ポネンス)、
『AならばB、Bでない、ゆえにAでない』(モードゥス・トレンス)です。
前提に暗に含まれていた情報を取り出すのが得意で、
真理保存性がある一方(前提が真ならかならず結論も真)、
新たな情報量は増えません。

一方、帰納は、枚挙的帰納法、アブダクション、アナロジーの3つからなります。
枚挙的帰納法は、
『a1はPである、a2はPである、(きっと)すべてのAはPであるAである』
と、個々の事例から一般化することが得意技です。
アブダクションは、
『Hと仮定するとなぜAなのかうまく説明できる、(きっと)Hである』
と、一番よさそうな説明へと推論するのが得意技です。
アナロジーは、
『aはPである、aとbは似ている、(きっと)bもPである』
と、類比的に知識を拡張するのが特徴です。
3つの帰納は共通して、仮説を立てることが得意で、
真理保存性はありませんが、
情報量が増えます(結論には前提には含まれなかった情報が付け加わる)。


次に仮説演繹法が説明されます。
① 観察や実験から仮説を立てる(これは帰納)
② 仮説→予言(これは演繹)
③ 予言を実験や観察で確かめる
その結果、仮説は確証されるか、反証される。
④ 予言が確証されれば、仮説が正しかった。(これは帰納)
⇒仮説演繹法を正当化するためには、
『帰納の正当化』が重要である。と言うことになります。


そこで、次に、帰納に対する懐疑論(ヒューム)が紹介されます。
(読み始めた頃には帰納に対する懐疑が回避できるのかが、
知りたいことのひとつでした。)
帰納的推論を論理的に正当化することはできない(真理保存性はないから)
帰納を経験的に正当化することもできない
帰納を、『斉一性の原理』によって正当化することもできない
(自然はこれまで斉一性だったから、これからもそうだろうと推論しても、これも帰納的推論だから)
といったことが、帰納に対する懐疑論になります。


次に、帰納に対する懐疑論に対抗する反証主義(ポパー)が紹介されます。
① 推論を仮説の形で立てる
② 仮説から予言を引き出す
③ 実験により予言がはずれると、仮説は反証され捨てられる(反駁)。
④ 反証に失敗し続けると仮説は生き抜き、安定する。


次に、実在論について説明がされます。
まず、独立性テーゼとは科学と独立した世界の存在と秩序をみとめるもので、
知識テーゼとは、科学と独立した世界はあるが、科学によってそれを知りうるかに関しては、
反実在論は、知識テーゼを観察不可能な対象についてだけ拒否する。
広義の実在論は、独立性テーゼYesで
科学的実在論は、知識テーゼにもYes、
半実在論(操作手技、道具手技、構成的経験主義)は、知識テーゼにはNo。
観念論、社会的構成主義は、独立性テーゼにもNoと分類されます。

実在論を擁護する第一の論拠は奇跡論法である。
しかし、奇跡論法には、悲観的帰納法(あとから実は偽であるとわかる例があるから、
現在真であっても実在を正しくとらえている根拠はない)という強力な批判がある。

また、対象実在論という考え方があり、
対象に対する実在論と、法則に対する実在論とを分けて考える。
法則も、現象論的な法則と、基本法則の2種類に区分する。
対象実在論は、基本法則についてだけ、反実在論をとる。
観察不可能な対象でも、おおむね意図したとおりに介入できたり操作できたりする(操作可能性)。
それがその対象が現にあるということの最も強い根拠である。

また、意味論的捉え方という考え方もある。
モデルは実在システムそのものではなく、
実在システムが単純化されたリプレカである。
したがってモデルと実在システムの間には、類似関係が成り立つ。
類似関係は程度をゆるす関係であるため、悲観的帰納法を退けることができる。
意味論的捉え方を適用することで、
科学の目的とは、実在システムに重要な点でよく似たモデルを作ることだと言える。
帰納の妥当化は困難だが、擁護はできる。
そもそも、我々が住んでいる世界は帰納が役立つ場所なのである。


【感想】
ぼくは、科学的実在論が一番しっくりきます。
人間がどう真理を捉えようと、それとは別に一貫として世の中には真理が存在し(独立性テーゼ)、
科学とはそれを知りうる方法であるのだと思います。

ただ、科学によって、真理にどこまで近づけるかについては、懐疑的です。
やはり科学は帰納の問題から抜け出せないのが一番の理由です。
どこまでいっても、本当の意味で真理に到達することはできず、
真理の近似にたどり着いているかに関しても、最後はどこか、そう信じるしかないと思います。
そういった意味では知識テーゼにNoですが、反実在論ではありません。

対象実在論に関しても、基本的法則であっても科学によってこそ、
その法則に近づくことができると思います。
かといって、対象や現象論的法則であっても、
科学によって完全にそれを把握することができるかといわれると懐疑的です。
医学の世界では、操作できたり、観察できる対象に関する法則でも、
その事実が間違っていて、ひっくり返ることはよく経験することです。

ただ、真の意味で真理にたどり着けないからと言って、
科学を放棄すべきではないことは当たり前だと思います。
それでも真理にたどり着く最善な方法は科学であると思うからです。
科学とは意味論的な捉え方で、真理に近いモデルを作り、
真理に近づくことが目的だということは非常にしっくりきます。
しかし、どこまで真理に近づくことができたのかは、どうやって知るのでしょうか?
懐疑的悲観論が完全に除かれたわけではないし、最後は、信念が影響してしまう気がします。

というわけで、科学は真理の近似に近づく方法であると思います。
ただ、今自分が知っていることが、
どこまで真理に近づいているかはどうやって知ったらいいのかが、残された疑問です。

2011年11月11日金曜日

人を伸ばす力―内発と自律のすすめ


エドワード・L. デシ, リチャード フラスト

人を伸ばす力―内発と自律のすすめ


『モチベーション3.0』ではモチベーション3.0とは、内発的動機づけであり
その重要な3つの要素は『自律性』『マスタリー』『目標』でした。

本書では、内発的動機づけの源として
『自律性への欲求』『有能さへの欲求』『関係性への欲求』をあげ
特に自律性を重要視しています。


自律性はどうやったら伸ばすことができるのか?

誰もやりたがらない仕事はどうやったら自律的に行えるようになるのか?

という疑問をもって、読んでみました。


(以下要約)

内発的動機づけ=『自ら学ぶ・やる意欲』

外から圧力をかけられることなく、自ら偽りのない気持ちに基づいて学んだり仕事をしようとする意欲


内発的動機づけの源
『自律性への欲求』『有能さへの欲求』『関係性への欲求』
内発的動機づけは自律的でありたい(自己決定したい)、有能でありたい、周囲の人と暖かい人間関係を持ちたい持っていたい、という気持ちに支えられているといえる。

行動と結果を結び付ける仕組みが出発点となる。
望ましい結果をどうやって達成したらよいかが理解されなければならない。
また、その手段的活動に対して有能感を感じることである。
さらに、内発的動機づけは人の自律性を支えるような対人的な文脈において促進される。
このような重要な構成要素が揃うことによって、人は自分自身の目標を設定し、自ら自己評価の基準を定め、自己の成長をチェックし、目標を達成するだろう。


(誰もやりたがらない仕事をどうやったら自立的に行えるようになるかについて)

たいていの活動は、けっしておもしろいものではない。
だが社会のなかできちんと役割を果たしていけるようになるためには重要なことである。
こうした方法には取り入れと統合のふたつがある。
取り入れは単にそのルールを取り入れただけで、真に自律的に行動することの基盤にはならない。
統合とは、ルールをよく噛み砕いて消化することであり、内在化されることで、こうした規範はあなた自身のひとつとなり、こうした統合を通じて、人は重要ではあるが少しも面白くない活動を自ら行えるようになる。
統合を促進するためには、第一に合理的な理由を与えることが必要であり、第二に本人はやりたくないと思っているかもしれないことを認めあげること、第三に圧力を最小限にしか含まないことが重要である。すなわち、理由付け、承認、および選択である。

社会化の過程では嫌なこともしなければならないが、その場合には、いやなことが本当に自分のものになるように(すなわち、内在化され自己に統合されるように)暖かく支援することが重要であること、子供たちに適切な行動を行わせようとする時には、愛情をその行動に随伴させるのではなく(その行動ができるようになることだけに愛情を注ぐのではなく)、すべての行動に愛情をそそぐことが重要である。


(どうやったら自律性をのばせるか?)

選択の機会を提供すること、それは広い意味で、人の自律性を支えるための主要な条件である。
したがって、他者に対して権力を持つ立場にいる人は、どのようにしたらより多くの選択を提供できるかについて検討する必要がある。
ポイントは、意味のある選択が自律性を育むという点にある

人は、自ら選択することによって自分自身の行為の根拠を十分に意味付けることができ、納得して活動に取り組むことができる。
同時に自由意思の感覚を感じることができ、疎外の感覚が減少する。
しかも、もし選択の機会が提供されるならば、人々は自分がひとりの人間として扱われていると感じる。
このように、選択の機会を提供することによって、問題をうまく解決することができるのである。


(患者さんの自律性を援助するには?)

医療でパートナーシップを築くことは、医者が自律性を支援し患者の視点をとることを意味する。
したがって、自律性支援的か統制的かといった医者の患者に対する態度が、患者の動機づけや健康に及ぼす影響についての我々の研究は、生物心理社会的アプローチが健康な行動の変化を促進するということを示唆している。

(1) 他者の視点をとり
(2) 他者の気持を認め
(3) 情報を提供し
(4) 示唆や要求に理論的根拠を与え
(5) 選択肢を提案し
(6) 支配的なことばや態度の行使を最小限におさえる

2011年10月25日火曜日

リスクにあなたは騙される


ダン・ガードナー

リスクにあなたは騙される―「恐怖」を操る論理


リスク 神々への反逆』『リスク心理学入門』に続いて、リスクについてです。

本著が一番読みやすいかもしれません。

以下のような、プロローグから始まります。

プロローグ

9月11日、その後多くの人は飛行機を避け、車を移動手段として使用した。
しかし、実際には、飛行機による移動のほうが車の運転より安全なのである。
ある論文では、米国人の飛行機から車への移行は一年間続いた。
飛行機から車への移行の直接の結果としての車の衝突で死亡した米国人の数を算定した結果、1595人であった。
9月11日の不運なフライトの総搭乗員数の6倍である。
こうした行動の原因は恐怖である。


そして、『リスク』が社会に及ぼす影響と、

それに関連する『恐怖』に関して言及していきます。

はじめにどうして社会が過剰にリスクを恐れるようになったのか?を考察し、

その理由として、『私利』『文化』を挙げます。

次にリスクに関する心理学的要因として、『感情』『理性』が挙げられます。

そして感情がいかにリスクの処理に影響していくかに迫っていきます。


以下、要約です。

恐怖は建設的な感情になりうる。
何らかのリスクを懸念しているとき、より多くの注意を払い適宜行動に出る。
恐怖のおかげで私たちは生き延び反映し続けて生きた。
人類が存在しているのは恐怖のおかげだと言っても過言ではない。
しかし『いわれのない恐怖』は別問題である。
私たちは歴史上もっとも健康で、最も裕福で、最も長生きな人間である。
しかし、私たちはますます怖がるようになりつつある。
これは現代の大きなパラドックスの一つである。
私たちがリスクについて考えたり行動したりすることの多くは意味をなしていない。
リスクに関する判断はおかしくなり、致命的な結果になることもある。
したがって、なぜこれほど頻繁にリスクを誤って受け取るかを理解することは重要である。どうして私たちは急増する比較的小さなリスクを恐れるのか?
逆に、どうして頻繁に大きな脅威を平気でやり過ごすのか?
どうして『恐怖の文化』を持つことになったのだろうか?

答えの一部は私利にある。
恐怖は売り物になる。恐怖はもうかる。
恐怖は素晴らしいマーケティングツールである。
だから、テレビをつければ、いつも恐怖が利用されている。
政治家やメディアも同様である。

次の要因として、文化(カルチャー)がある。
いろいろなリスクを恐れる、あるいは関心ないものとして退けるかどうかは、文化的価値によることがよくある。
いったん信念が出来上がると、私たちは見聞きすることを偏った方法でふるいにかけ、自分の信念が正しいことが証明済みであると思えるようにする。
これを確証バイアスとよぶ。
信念を共有する人々が集まってグループを形成すると、自分たちの信念が正しいことにいっそう自信を深めものの見方がさらに極端になる、これを集団極性化と呼ぶ。
確証バイアスと集団極性化、文化を合わせると、私たちは、どのリスクが再考に値しないのかに関して、なぜ人によって完全に異なった見解に行きつくのかを理解し始める。

しかしリスク理解における心理学の役割は、これが出発点に過ぎない。
すべての人の脳は2つの思考システムを有している。
この2つは感情と理性として知られている。
言い換えるなら、腹と頭である。
理性は、ゆっくり動く。それは証拠を調べる。それは計算を行い塾考する。
理性が決定を下す時、言葉にして説明することは容易である。
感情はまったく異なる。
理性と違って意識的に認識することなく働き、稲妻と同じくらい早い。
感情は、予感や直感として、あるいは不安や心配、恐れなどの情緒として経験する即座の判断の源泉である。
感情から生まれる決定は言葉で説明することが難しい。あるいは不可能でさえある。
感情の一つの働きとして、経験則がある。
利用可能性ヒューリスティックとも呼ばれる。
その経験則とは、何らかの例が簡単に思い出されれば、それは一般的なものに違いないということである。
人は1%と表現されるより100に1つといわれるほうがずっとリスクが大きいと判断する。

大惨事の可能性、馴染み、理解、個人による制御、自発性、子供、未来の世代、犠牲者の身元、極度の恐怖、信用、メディアの注目、事故の歴史、公平さ、利益、復元性、個人的なリスク、出所、タイミング。こうした要素が、リスクの認知に影響する。
しかし限界がある。結局は判断は無意識であり、腹はブラックボックスなのである。
大惨事の、不本意な、不公平な。これらの特性の集合体『恐怖要因』が腹に影響する。
事実を明るみに出すことによってリスクにまつわる不安をやわらげることができると考えるのは間違っている。
腹で判断するのだから。

2011年10月7日金曜日

ブレイン・ルール


ジョン・メディナ

ブレイン・ルール


いわゆる、脳科学モノです。

科学の世界で証明されている研究成果だけをもとにして、

シンプルだけどとっても強力な脳の仕組みを

12個の「ブレイン・ルール」として紹介しています。


脳科学での説明ってなんとなく、説得力がありますが、

個人的には、脳科学的に病態を説明できたとしても、

それが実際の人間の行動にまで影響力があるかは、懐疑的です。

というわけで、本書の内容も、話半分で読んでましたが、

プレゼンテーションが上手なので、読み物として、楽しめます。


以下は、読んできて、個人的に気になったところです。

ルール1:運動;運動で能力がアップする

週に数回、20-30分の有酸素運動をする。


ルール4:注意

ひとつの課題に集中して当たれない場合、

その課題を完了するのに時間が50%も余分にかかることが分かった。

若い人は課題の切り替えが割合うまいだけ。マルチタスクはできない。

10分間たつと聴き手の注意はどこかへ行ってしまう。

それでも、体験談を話したり、感情をかきたてる出来事をはさむと、聴き手の心をとらえておける。


ルール5:短期記憶;繰り返し覚える

学習したものがそのまま覚えられるかどうかを左右するできごとのほとんどは、

学習の最終の数秒に起こる。

この最初の瞬間に記憶を精緻にコード化すればするほど、記憶は強固になる。


ルール6:長期記憶;おぼえてもなお繰り返す

ほとんどの記憶は数分以内に消えてしまうが、

壊れやすい期間を生き延びた記憶は、時間とともに強化される。

長期記憶をもっと信頼できるものにするには、新しい情報を徐々に組み入れ、

時間の間隔をあけて繰り返すといい。


ルール7:睡眠

必要とする睡眠の量やどの時間帯に睡眠をとりたいかは、ひとによって違う。

でも、午後のお昼寝を求める生物学的な衝動は、誰もが持っている。

睡眠不足だと、注意や実行機能、作業記憶、気分、数量的能力、論理的推論能力、

さらには運動の器用さがそこなわれる


ルール8:ストレス

個人の立場からすると、もっとも悪いストレスは、問題を制御できないと感じること、

すなわち無力感を覚えること

感情面でのストレスは、子供が学校で学習する能力や、職場での社員の生産性など、

社会全般にわたって多大な影響を与える


ルール10:視覚;視覚はどんな感覚も打ち負かす

視覚は、他のどの感覚よりも勢力が強く、脳の資源の半分を使っている

学習や記憶が最も進むのは絵を使う場合だ。文章や口頭で伝える場合ではない。



2011年9月30日金曜日

ポジティブな人だけがうまくいく3:1の法則


バーバラ・フレドリクソン

ポジティブな人だけがうまくいく3:1の法則


基本的に、自己啓発本はあまり好きではありません。

あまりにも内容が科学的ではなく、

どうしても胡散臭く感じてしまうからです。

しかし本書は、自己啓発本というより『ポジティブ心理学』という

分野からの科学的、かつ実用的な内容であり、

勧められる1冊だと思います。


本書の内容は、医療で言うところの、認知療法に通じるものを感じました。

医療において、認知療法は確立した治療として1分野を築いています。

それは、科学的に、方法論もその効果も充分実証されているからです。

うつ病の人が自ら認知療法に取り組むために書かれた本として

『嫌な気分よ、さようなら』があり、すすめられます。

さて、本書は、病気まではいかないまでも、

ポジティブな気持ちと、ネガティブな気持ちのバランスが悪くなったときに

どんな悪影響があるかから始まり、

ポジティブな気持ちを増やすためにはどうしたらいいか、

ネガティブな気持ちを減らすにはどうしたらいいか、

までに言及していき、その内容は、十分に科学的と言え、

こうした自己啓発に類似した内容の本としては、

医師としても十分勧められる内容になっていると思います。


ネガティビティとは

自己否定的な心の状態で考えを支配し、判断を左右する影響があります。

ポジティビティとは

幅広い肯定的な感情(喜び、感謝、安らぎ、興味、希望、誇り、愉快、鼓舞、畏敬、愛)です。

ポジティビティは

① 気分がいい
② 思考の幅、視界に入る可能性の範囲を広げてくれる
③ 未来に最良の結果をもたらす
④ ネガティビティにブレーキをかける
⑤ ティッピングポイントをもつ(効果は非線形である)
⑥ 増やすことができる

といった効果があります。


ポジティビティとネガティビティの比をP/N比といい、

3:1がティッピングポイントです。

これを超えるとポジティビティの上昇スパイラルに突入します。

最適なポジティビティ比は4:1。

大多数の人のポジティビティ比は約2:1。

うつ病などの病的なポジティビティ比は1:1以下となります。


本書の中でポジティビティ比の自己診断テストが紹介されており、

自分のP/N比を知ることができます。


そして、ネガティビティを減らすための方法として、

認知行動療法的アプローチ

① 典型的なネガティブ思考の例を書き出す
② 徹底的に確信に満ちた声でそれに反論する

○ 有害な反芻に気付き、健全な方法で気持ちをそらす
アルコールや食べ物やメディアではなく、運動や読書、会話など

○ 可能であるなら状況を少し手直しする


ポジティビティを増やす方法として、

日々遭遇する状況に、もっと頻繁にポジティブな意味を見いだすことがカギになる

恵まれている点を心に留める、
自分のした親切を認識する、
好きなことに夢中になる、
将来を夢見る、
自分の強みを生かす、
他者との絆を作る、
自然とのつながりを持つ

○ 瞑想する

① 静かになれる場所で、リラックスした姿勢で座り、眼を閉じる
② 何回か深呼吸をして、自分の呼吸を観察する
③ 意識があちこちにさまよったら、再び呼吸に意識を戻す
④ 意識がひきこまれたら、柔らかい言葉で考えや感情を表現し、今の瞬間に立ち戻る
⑤ 家族など暖かい感情をもつ存在をイメージする
⑥ 愛する人のイメージは手放して、感情だけを保つようにする
⑦ その温かい感情を自分自身に向ける
⑧ 最終的には、他人、町、地球とイメージを広げていく

2011年9月9日金曜日

『やればできる!』の研究


キャロル S.ドゥエック

『やればできる!』の研究


人間の成長や教育に対して、信念がどう影響するかという内容です。

『こちこちマインドセット』を『しなやかマインドセット』に変えることによって、

人は変わることができ、成長できるようになることを説明します。


『こちこちマインドセット』fixed-mindset

自分の能力は石板に刻まれたように固定的で変わらないと信じている人

自分の能力を繰り返し証明せずにはいられない

自分が他人からどう評価されているかを気にする

つまずいたらそれで失敗、努力は忌まわしいこと


『しなやかマインドセット』growth-mindset

人間の基本的資質は努力次第で伸ばすことができるという信念

うまくいかないときこそ、粘り強くがんばる

自分を向上させることに関心を向ける

成長できなければ失敗、努力こそが人を賢く、有能にしてくれる


ほとんどの人が両方のマインドセットをもっている。

同じ人でも分野ごとにマインドセットが異なる場合もある。

能力が伸ばせると信じている分野の能力は、実際に伸びていく。

マインドセットは自分の意思で選び取ることができる。


認知療法では、非効率な自動思考に、注意を払い、意識を傾けるように導くことから始まります。

そして、最終的には、非効率的な自動思考を引き起こす

『私は無能だ』や『私は愛されない』といった信念を変更することを目標とします。

本書では、『こちこちマインドセット』におちいっている人を認知療法で救い出すことはできないと言いますが、

ぼくは、認知療法的アプローチで修正可能だと感じました。

むしろ能力に関して『こちこちマインドセット』がある場合は『私は無能だ』という信念がさらに根底に存在し、

対人関係に関して『こちこちマインドセット』がある場合『私は愛されない』という信念が根底にあり、

最終的には、そこまで掘り下げて信念を修正することが、

本当の解決につながるのかもしれないと感じました。

いずれにせよ、『こちこちマインドセット』という信念の存在に気づき、

それを修正することは、学習や、成長において重要な概念であることは確かなようです。

2011年8月19日金曜日

スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン


カーマイン・ガロ

スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン


僕は残念ながらMAC派ではないので、

直接的にスティーブ・ジョブズのプレゼンを体験していません。

しかし、彼のプレゼンはエンターテイメントの位置に達しているようです。

本書を読んだあと、you tubeで彼のプレゼンを追体験し、

その事実を思い知らされ、MAC派で無い自分が少し寂しく感じたほどでした。


本書では、そのスティーブ・ジョブズのプレゼンの秘訣を18項目に分割し、教えてくれます。

その内容は、奇をてらったものではなく、

非常に普遍的なプレゼンの方法であると感じました。

プレゼンの本をひとつ選んで読むとして、

それが本書であってもよい充実した内容であると思います。


以下は要約です。

3部構成で、

プレゼン内容の用意

プレゼン方法の用意

そしてその練習  といった流れです。


『ストーリーを作る』

(1)構想はアナログでまとめる

以下の点に配慮;
ヘッドライン(新聞の題名となるような)
3つのキーメッセージ
パッションステートメント(この会社(構想、未来など)が私は大好きだ。なぜなら。。。)

そして、どのようなストーリーを作り上げるか!!

(2)一番大事な問いに答える

『聞き手はなぜこのアイデア/情報/サービスに注意を払うべきなのか』を自問すること。
覚えて欲しい立ったひとつのポイントはなんだろうか?
できる限り明快に、少なくとも2回は伝えること

(3)救世主的な目的意識を持つ

自分だけのパッションステートメントをつくる。
なぜ心から真剣にそうしているのか、その理由を1文にまとめ、売り込む相手につたえる。

(4)ツイッターのようなヘッドラインを作る

ヘッドラインとは、よりよい未来というビジョンを聴衆に提案するものという点を忘れないこと。
あなたによってのよい未来ではない。聞き手にとっての良い未来。

(5)ロードマップを描く

主要メッセージが3つになるまで絞り込む。
それぞれのキーメッセージ、効果を高める部品を用意する。
体験談、事実、実例、アナロジー、メタファー、推薦の言葉

(6)敵役を導入する

プレゼンテーションの早い段階で敵役を導入する。
解決策を提示する前に必ず、問題を提起するのだ。
問題提起は、聴衆が痛みを感じる部分を鮮明に思い描ければ簡単に行える。
『なぜそれが必要なのか』と自問すれば問題は提起できる。
時間を割いて問題を詳しく説明する。聴衆に実感を持ってもらう。痛みを強く感じてもらう。

(1)何をするのか?
(2)どの問題を解決しようとしているのか?
(3)ほかとはどう違うのか?
(4)なぜ気にかける必要があるのか?
人々が気にするのは、自分の問題を解決することなのだ

(7)正義の味方を登場させる

ユーザーが痛みを感じるポイントをはっきりさせて敵役としたら、自分の会社、製品、さービスがどのような形でその痛みを和らげてくれるかを分かりやすい言葉で説明する。


『体験を提供する』

(1)禅の心で伝える
1枚のスライドは1つのテーマに絞る

(2)数字をドレスアップする
数字を聞き手の暮らしに密着した文脈におくことが大切である。

(3)ステージを共有する、小道具を上手に使う

(4)『うっそー』な瞬間を演出する
画期的な発表である必要はない。
体験談を話す、新しい情報や予想外の情報を提供する、
デモを行うなどの形でも聴衆の記憶に残る瞬間を演出できる。
予想を大きく外せればはずせるほどいい。
感動の瞬間にむけた筋書きを作る。
十分に盛り上げてから爆弾を落とすこと。
爆弾投下はよく練習しておくこと


『仕上げと練習』

(1)存在感の出し方を身につける
(2)簡単そうに見せる
(3)目的にあった服装をする
(4)台本を捨てる
(5)楽しむ


2011年8月5日金曜日

フロー体験 喜びの現象学


M. チクセントミハイ

フロー体験 喜びの現象学


『モチベーション3.0』にて指摘されていた、

モチベーションコントロールのために必要な3つの要素は、

『自律性』『マスタリー』『目的』でした。

本書で述べられている『フロー』は特に『マスタリー』との関連で紹介されていました。

マスタリーはフローではじまります。

フローとは、取り組んでる課題が本質的に自分の能力と整合している場合の最適経験のことで、

日々の活動を難しすぎず、易しすぎない業務にする必要があるのです。


時間を忘れて、仕事に没頭し、成果を上げられる体験は、非常にエキサイティングなことです。

それがフロー体験です。

フロー体験とはどのような条件で達成できるのか、その謎に迫ります。


以下、要約

内的経験の最適状態というのは、意識の秩序が保たれている状態である。

これは心理的エネルギー(つまり注意)が現実の目標に向けられている時や、

能力(skill)が挑戦目標と適合している時に生じる。

1つの目標の追及は意識に秩序を与える。

人は当面する課題に注意を集中せねばならず、その間は他のすべてを忘れるからである。

挑戦目標の達成に取り組んでいる時が、生活の中で最も楽しい時である。

心理的エネルギーの統制を達成し、

それを意識的に選び取った目標にむけた人は必然的により複雑な存在へと成長する。

このような人は能力を高め、より高度な挑戦目標へと近づくことによって、

次第に非凡な能力を持つ人間に代わっていく。


フローの要素

能力を必要とする挑戦的活動

好意と意識の融合

明確な目標とフィードバック

今していることへの意識集中

自意識の消失

時間の返還



仕事を通して生活の質を高めるには、ふたつの補足的戦略が必要である。

1つは仕事はできるだけフロー活動(狩りをする、小屋を作る、手術をするなどのように)に

似せるよう設計しなおされねばならない。

しかしまた、挑戦の機会を認識し、能力を磨き、

達成可能な目標を設定できるよう人々を訓練することによって、

自己目的的なパーソナリティを発達させるように手助けすることも必要である。

これらの戦略の1つだけが仕事をより楽しいものにするとは思えない。

両者がそろうことにより、それらは大きな最適経験におおきく貢献するのである。


仕事中、人々は能力を発揮し、何ものかに挑戦している。

したがってより多くの幸福・力・想像性・満足を感じる。

自由時間には一般に取り立ててすることがなく、能力は発揮されておらず、

したがって寂しさ、弱さ、倦怠、不満を感じることが多い。

それにも関らず彼らは仕事を減らし、余暇を増やしたがる。

この矛盾したパタンはなにを意味するのだろうか?

いくつかの説明ができるが、必然的に得られる結論が1つあるように思われる。

仕事に関しては、人々は自分の感覚が得た証拠を重視しない。

彼らは直接的経験の質を無視し、

代わりに仕事とはこのようであるはずだという根強い文化的ステレオタイプに基づく前提に動機づけられている。

彼らは仕事を義務、束縛、自由の侵害と考え、したがってできるだけ避けるべきものと考えている。


自己目的的な自己を発達させるルール

(1) 目標の設定、及びフィードバックを監視する

(2) 活動への没入

(3) 現在起こっていることへの注意集中

(4) 直接的な体験を楽しむことを身につける

2011年7月15日金曜日

プレゼンテーションzen デザイン


ガー・レイノルズ

プレゼンテーションzen デザイン


以前紹介した『プレゼンテーションzen』の続編です。

今回はビジュアルコミュニケーションのデザイン全般に重点を置き、

スライドデザインの構成要素である

サイズ、配置、色その他の要素とのバランスを慎重に考慮することの必要性や、

余白や角度といった要素の持つ聴衆への影響などを、

豊富なサンプルとプロフェショナルなアドバイスを交えてわかりやすく解説しています。


プレゼンテーションzenの内容に惹かれた方には、

その具体的なスライドづくりに言及している本書は必ず役立つはずです。


1)タイポグラフィの活用

一番後ろの席の人に合わせる(でっかく行こう)

文字の間隔を意識する(書式>行間>段落前、段落後)

書体の選択(P60)、大体の目安は1~2つ

テキストの配置(傾けたり、視線の先に配置)


2)色彩によるコミュニケーション

同じ色相を使うことで、全体的に統一感のある、プロフェッショナルな仕上がりに

類似色を使用して、色の調和を保つ

補色を用いて印象を強烈に(時に強烈すぎるので、明度や彩度を調整することも)

白黒にワンポイントカラーを加える

大きな会場や照明の暗い会場では、背景色は黒っぽく、
たいていの場合は十分に明るいので白っぽい背景でもOK

自分だけのカラーパレットを作る(kuler.adobe.com)


3)写真や動画でストーリーを語る

裁ち落としにすることでインパクトを出す(P117)

最適な解像度(100ppi:800×600、1024×768)

1枚のスライドで1トピックに絞る

iStockphotoのCopyspaceの活用


4)データを簡素化する

SNRをできる限り高くする

3つの基本原則(自制心を働かす、減らす、強調する)


5)スペースを活用する;余白の持つ美しさ

対称的デザインと非対称的デザイン

視線を誘導する

スライドの枠外のスペースを暗示する

人物画像は時に避ける

6)調和を生み出す

グリッドを使う(3分割法、5列4行)


2011年7月1日金曜日

医療改革をどう実現すべきか?


マーク・ロバーツ、ウィリアム・シャオなど

医療改革をどう実現すべきか?

著者たちはこう言っている。

医療改革をただしくやることは容易ではないと繰り返し主張してきた。

利益団体、政党、官僚機構は優先順位も違えば、志向する政策も異なる。

既存の勢力は変化に抵抗する。

医療制度が複雑であるということは、

ほとんどどんな政策にとっても予期せぬ結果をもたらしうるということである。

経済的不安定、政治的混乱、社会・文化的発展度合いによっても、

どのような政策が可能あるいは必要とされるかが変わる。

実際、正しい医療改革のための単純な方法はないので、

私たちの指針は常に多様な要素を前提条件としている。


その上で教訓的に言えることは、

(1)医療制度は、時には対立を繰り返しながら、

様々な目的にそうように進化してきた複雑な社会経済的存在である。

(2)いかに複雑であっても、一国の医療制度が生み出す結果は、

公共政策を適切にデザインし実施することにより改善することができる。

(3)効果的な改革パッケージをデザインするためには、

改革しようとするシステムそのものに対する深い理解が必要となる。

(4)結果の改善に焦点を当てた改革でなければ、

いくら事情が理解できても、パフォーマンスが低下する。



それでは、実際、どのように改革を進めたらいいのだろうか?

(1)目標を明確にする

具体的には、パフォーマンス目標と、中間指標が存在する。

パフォーマンス目標とは、健康状態、顧客満足度、経済的保障であり、

中間指標は、効率、質、アクセスである。

様々な倫理的思想(功利主義、自由主義、共同体主義など)によって、

優先する目標は異なってくる。

政治的条件も影響する。

優先順位づけは戦略的に行うべきである。

(2)目標を実行するための公正な診断を行い、

自国の状況において効果が期待できる計画を立てる。政治を受け入れる。


5つのコントローラがある。財政、支払い、組織、規制、行動の5つであり、これらはお互いに影響し合う。


(3)実施に焦点をあて、過ちから学ぶ


本著の中で明らかにしているが、4人の著者は、

平等主義的コミットメントを中心に据えた倫理的視点に立っている。

そして、国家は国民の中の最も恵まれない人たちが得ることのできる機会を

改善することを優先すべきだと考えている。

そのため、倫理的思想が異なると、著者たちの考えには素直に従えないところもある。

そうした場合は、必要に応じて著者たちの提案を調整し、味付けをして欲しいと言っている。


医療制度に焦点をあてた医療改革についての書であるので当たり前だけど、

医者はあくまで改革の対象で、もしくは圧力団体とされている印象を受け、

読んでいて、好感が持てる内容ではなかったです。

確かに内容は間違ってないのでしょうが、結局、解決策が提示されているわけではなく、

改革のひとつの方法が示されていると言うだけで、

うまくいくかどうかはまた別の次元の話のような気がします。

本書の内容の方が現実なのでしょうが、

『医療戦略の本質』の内容の方が、医者にも役割があり、夢があって好きかな。

2011年6月17日金曜日

教育×破壊的イノベーション


クレイトン・クリステンセン

教育×破壊的イノベーション


『イノベーションのジレンマ』で有名なクリステンセンが

教育問題に取り組みます。

ここで提示された解決策は、

(1) 現在、生徒がうまく学べない根本原因に取り組む改革は少ない。


(2) これまでの、学校改革は、現行体制を激しく非難し、真っ向から対抗しようとするものが多かった。

だがイノベーション研究は、破壊的イノベーションが既存体制への直接攻撃を通じて根を下ろすことはない、という大きな教訓を与えてくれる。

むしろ得策は、既存体制を迂回し、その下を狙うことだ。

これが、破壊を手ごろで、使いやすく、便利で、即応性に優れたものにする方法なのだ。


(3) 1人ひとりの子供の学び方が違うことを認識すれば、現在の学校教育体制(すべての生徒に、同じことを、同じ時に、同じ方法で教える、一枚岩型のバッチシステム)では、子供たちをそれぞれにあった方法で教育できないことが分かる。

必要なのはモジュール方式の体制だ。


(4) 現行体制を迂回し個別化を容易にする、モジュール方式の新しい教育体制を生み出す可能性が最も高い場所の一つが、オンライン・ユーザー・ネットワークである。


(5) 最後に、学校の管理者や指導者が本気でこのような変化をもたらそうとするならば、権力ツールと分離ツールを用いなくてはならない。


ということです。

まぁ、そういう方法もあるでしょうが、これが普遍的な解決策かと言われたら、

どうでしょう!って感じです。


本題からずれますが、(5)と関連して、変革のコンセンサスを形成する方法が役立ちそうです。

置かれている状況を、

(1)『目的に関する合意』がされているか?されていないか?

(2)『実現手段に関する合意』がされているか?されていないか?

の4つのマトリクスに分類します。

目的に関しても、実現手段に関しても合意が形成されいれば、変革は問題ないでしょう。

目的に関しては合意が形成されているが、実現手段に関して合意形成されていなければ

リーダーシップに関する方法が有効である。

実現手段に関して合意形成されているが、目的に関して合意形成されていなければ

教育研修、業務手順、業績評価制度など管理的な方法が有効である。

そして、目的に関しても、実現手段に関しても合意形成がない場合

権力により協調的な方向をしめすしか方法がない。

しかし、学校や病院といった公共では権力的な手段を選択できることは少なく、

変革が難しい理由のひとつといえる。

そうした場合、強い合意が持てる集団を分離してまずはそこから変革を進めるという

方法が考えられる。

2011年6月3日金曜日

ピープル・スキル


ロバート ボルトン

ピープル・スキル


発売から30年、いまだ全米で年間2万部を売りつづける超ロングセラー名著です。

人間関係を壊すコミュニケーション上の「12の障壁」とはなにか?

それらをなくし、人とうまくつきあうための具体的な方法が、

豊富な「失敗例」「成功例」とともに示されます。


対人関係には、3つのスキルがあります。

『傾聴スキル』、『自己主張スキル』、『対立解消スキル』

この中でも、重要なのが、傾聴スキルと考えられます。

そしてこの3つのスキルは、患者さんとのコミュニケーションに必要なスキルで、

多くの医師は自然と身についているスキルであると思います。


普通の人が起きているときに1番時間を使うのがリスニングです。

様々な職業分野の人を調査した結果、

目覚めているときの70%はコミュニケーションに費やされているという事実が分かりました。

そのうち、書くことが9%、読むことに16%、話すことに30%、

そして聞くことに45%の時間を割いていたということです。

また、人間のコミュニケーションの85%が非言語的なものだと推定されています。

そのため、向き合うことも重要です。


リスニングスキルの3つのスキル

(1) 向き合いスキル

① 真剣な態度を見せる

② 適切な動作(ジェスチャー)を示す

③ 視線を合わせる

④ 集中できる環境を作る

(2) 促しスキル

① ドアオープナー(話のきっかけ)を与える

② 最小限の刺激を与える(たとえばあいづち)

③ 質問を減らす

④ 相手に気を配りながら沈黙する

(3) 反映スキル

① 相手の話の内容に焦点を当てて『言い換えを行う』

② 『感情をくみとり応答に反映させる』

③ 感情と話の内容を関連づけて『真意をくみとり応答に反映させる』

④ 『相手の話を要約する』


自己主張のスキル

(1)相手の問題行動を客観的に説明する

(2)自分にどういう影響があるかを具体的に述べる

(3)自分の感情をはっきり表現する


対立解消のスキル

対立が生じたときは、まずは感情的な問題を重点的に処理すべき

① 敬意をもって相手に接する

② 相手が満足するまで話を傾聴し、それを自分の言葉で言いかえる

③ 自分の意見を簡潔に述べる


自己主張と、対立解消のスキルは、傾聴スキルの延長といえ、

結局は、相手を批判しないで、傾聴を重視しながら、

対話を繰り返す、ということなのだと思います。


いくら正しい診断、正しい治療を行なっても、

患者さんの話を傾聴し、共感しないと、

満足してもらえないし、良好な関係は築けません。

でも、、、分かっているけど、傾聴ってパワーが要りますよね。

思わず患者さんの話を途中で中断したくなってしまったら、

この本の内容を思い出して、ぐっと我慢です。




2011年5月20日金曜日

Design rule index―デザイン、新・100の法則


William Lidwell, Kritina Holden, Jill Butler

Design rule index―デザイン、新・100の法則


『ハイ・コンセプト』のなかで、他人と差をつける6つの能力の中のひとつとして、

『デザイン』が紹介されています。

『プレゼンテーションZEN』においても、デザインは主要項目のひとつでした。


デザインっていうと、なんか生まれてもったセンスで、

後天的にはどうしようもないような感じがしますが、

デザインは自己学習できるスキルであるとぼくは感じます。


デザイン力というと、やはり、右脳系で、5感で感じて育てるイメージですが、

本書では、知識としてデザイン力を育ててくれる、左脳系の1冊といえます。


本書には、数学、哲学、生理学など、さまざまな分野から“デザイン原理”として

有益であろう100項目が集められています。

図版をふんだんに使いながら、1つの見開きで1項目を説明していきます。

眺めてるだけで、楽しいですし、いろいろな発見があります。

きっと、読み通せば、あなたのデザイン力は向上するはずです。


値段が高めですが、医学書に比べたら、たいしたことないでしょ!

娯楽書としても、損はない1冊だと思います。

2011年5月7日土曜日

マッキンゼー流図解の技術


ジーン・ゼラズニー

マッキンゼー流図解の技術

研究を行なっている人はもちろん、行なっていない人でも、

何らかのデータを図解し、プレゼンする機会はあると思います。

そんな時、どんな図表を用いるか意識的である人は多くないのではないでしょうか?

本著では、どんな場合にはどんな図表を用いるのが適切なのかを教えてくれます。

図表(チャート)には5つ、パイチャート(円グラフ)、バーチャート、コラムチャート、

ラインチャート、ドットチャートがあります。



現在、ソフトウエアのおかげで、作図は簡単になっています。

どんなタイプの図表を選択し、どんな点に注意するかを知っておけば、

だれでも簡単にすぐれた図解の技術を身につけることができると思います。


図解には3つのステップがあります。

ステップA:あなたのメッセージを決める(データからメッセージへ)

適切なチャートフォームを選ぶカギは、設計を行うあなた自身が、

何よりもまず、主張しようとするポイントを明確にすることです。


ステップB:比較方法を見極める(メッセージから比較方法へ)

あなたの決定したメッセージは必ず5つの基本比較法のどれかを選択することになります。


ステップC:チャートフォームを選択する(比較方法からチャートへ)

各々の比較方法が決まれば、おのずと5つのチャートフォームのどれかにたどりつきます。


以下は、気になった注意点です。

ステップA

タイトルはトピックタイトルではなく、メッセージタイトルにする。

ステップB

コンポーネント(構成要素)比較法:各パートのサイズを全体に対するパーセンテージで示すこと

アイテム(項目)比較法:アイテムの順位を比較したい場合(多いか少ないか、大きいか小さいか)

時系列比較法:期間内でどう変化しているか(変化、成長、上昇、下落、増加、変動)

頻度分布比較法:連続的な数値レンジ内にアイテムの中のいくつが該当するか(範囲、集中、頻度、分布)

相関比較法:2つの変数の関係が通常予測するパターンに従っているか、従っていないか(関連して、~にしたがって・・・)

ステップC

コンポーネント比較法⇒パイチャート

構成要素は6つを超えないように
最も重要なセグメントは12時から始まる位置に、色で協調する
特に重要なものがないときは、大きいものから小さいものへ

アイテム比較法⇒バーチャート

必ずバーの太さより隙間の方を狭くする
重要なアイテムはコンスラストをつける
数値をつける場合、最上位の上にメモリを振るか、バーの先端に数値をつけるか

時系列比較法⇒コラムチャートか、ラインチャート

7-8件までならコラムチャート、それ以上ならラインチャート
コラムチャートは大きさに焦点を、ラインチャートは変化の動きに焦点を

頻度分布比較法⇒ヒストグラムか、ヒストグラフ

相関比較法⇒ドットチャートか、バーチャート

2011年4月22日金曜日

モチベーション3.0


ダニエル・ピンク

モチベーション3.0


原題は『Drive;The Surprising Truth about What Motivates Us』です。

ビジネス書の中で影響を受けた10冊を挙げろと言われたら、その中に入ると思います。


医者の世界で、仕事や医師としての人生のマネジメントで

満足する経験をしている人は皆無であると思います。

たいていはその医師の個性や長所を無視した数合わせのその場限りのマネジメントで

モチベーションは低下し、不平がつもり、燃え尽きていきます。


そうした現状を変えるためには、セルフマネジメントを行っていくしかありません。

そうしたセルフマネジメントを行う上でも、本著は非常に役に立つと思います。


僕も、『自律性』『マスタリー』『目標』の3つの要素を意識しながら、

モチベーションコントロールを行いながら、医療を行い、キャリアアップしていきたいです。


以下、要約です。

人類には、飢餓動因、渇動因、性的動因などの生物学的な動機づけ(モチベーション1.0)があり、生存を目的としてきた。

その後継として、周囲からの報酬や罰に対して反応するもう一つの動機づけ(モチベーション2.0)が構築された。

これは20世紀のルチーンワークには有効であった。

しかし21世紀を迎えて、モチベーション2.0が有効に機能しないことがわかってきて、

モチベーション3.0が存在することがわかってきた。

新しくアップグレードされたモチベーション3.0とは、『内発的動機づけ』である。


モチベーション2.0では、期待したほどの成果は得られず、内発的動機づけを低下させ、

創造性を破壊し、人間の好ましい言動を阻害することがわかってきた。

モチベーション2.0は常に悪影響を及ぼすわけではなく、規則的なルチーンタスクには効果を発揮する。


モチベーション2.0はタイプXの行動を前提とし、これを助長する。

この行動は、内発的な欲求よりも、外発的な欲求を活力の源とし、

活動から満足感を得るというよりも、活動によって得られる外的な報酬と結びついている。

一方、モチベーション3.0は、タイプIの行動を前提とする。

この行動は、活動によって得られる外的な報酬というより、

活動自体からもたらされる内的な満足感と結びついている。

幸いにもタイプIは生まれながらの資質ではなく、後天的に養うことができる。


モチベーション3.0のアプローチには3つの重要な要素がある。

1つは『自律性』、自分の人生を自ら導きたいという欲求のこと。

2番目は『マスタリー(熟達)』、自分にとって意味のあることを上達させたいという衝動のこと。

3番目は『目的』、自分よりも大きいこと、

自分の利益を超えたことのために活動したいという切なる思いのことだ。


『自律性』

私たちの初期設定は、本来、自律的であり自己決定的である。

ところがあいにく種々の事情によりタイプIからタイプXへと変更をさせられる。

タイプIの行動を促すためには、最初に必要とされるのは自律性である。

そのためには、課題、時間、手法、チームについて自律性が必要である。


『マスタリー』

モチベーション2.0では従順な姿勢が求められたのに対して、

モチベーション3.0では積極的な関与が必要とされる。

積極的に関与して初めて、マスタリーを生み出せる。

マスタリーはフローではじまる。

フローとは、取り組んでる課題が本質的に自分の能力と整合している場合の最適経験のことだ。

日々の活動を難しすぎず、易しすぎない業務にする必要がある。

マスタリーのは3つのルールがある。

1つはマインドセット、能力は固定的でなく、無限に向上が可能であると理解する必要がある。

次にマスタリーには苦痛が伴う。

最後にマスタリーとは漸近線であり、完全にマスタリーを実現することは不可能だ。


『目的』

モチベーション3.0では、願望の対象や指針として、目的の最新化が、

利益の最大化と並んで認められている。

人間とは本質的に人生の意義や目的を探すものである。


自律性を高める戦略

10%~20%ルールを試してみる:

メイヨ―クリニックのような知名度の高い病院の医師は、

燃え尽きてもおかしくないほどのプレッシャーや要求に直面する。

だが、患者のケアや研究、コミュニティへのサービスなど、

医者自身にとってもっとも意味があることに、一週間のうち1日(20%)をあてた場合には、

仕事による肉体的、感情的な疲労を減らせることが判明した。

この方針を取り入れた医師は、そうでない医師と比べて、燃え尽きたケースは半数であった。

(Archives Internal Medicine 2009;169:990-995)

目標や、時間、手法、チームの設定に自律性を持たせる。


マスタリーに導く戦略
フローを意識して行う

意図的な訓練を行う。

とにかく反復する。

批判的なフィードバックを絶えず求める。

改善すべき点に厳しく焦点を合わせる。

訓練の過程の精神的、肉体的疲労を覚悟する


目的に関する戦略

常に目的は何かを問いかける

2011年4月15日金曜日

アイデアの力


チップ・ハース ダン・ハース

アイデアの力


以前紹介した『アイデアのつくり方』では、具体的なアイデアの作り方の話でした。

本著では、作り出されたアイデアを広めるための具体的な方法が書かれています。

『急に売れ始めるにはワケがある』では、

アイデアが一気に劇的に広がる瞬間、ティッピングポイントを迎えるための

3つの要因を挙げています。

『少数者の法則』『粘りの要素』『背景の要素』。

今回は、このうち、粘りの要素に焦点をあて、その具体的な方法を教えてくれます。


記憶に焼きつくアイデアとは?

6つの原則、単純明快さ、意外性、具体性、信頼性、感情、物語、

頭文字をとって、SUCCESの6つの要素からなります。

具体的に見てみると。。。

(1)単純明快である

核となる部分を見いだし、核となる部分を伝える

(2)意外性がある

関心をつかむ;驚きと、関心をつなぎとめる;興味に訴える

(3)具体的である

理解と記憶を促す、協調を促す

(4)信頼性がある

(5)感情に訴える

(6)物語性

2011年4月8日金曜日

リスク心理学入門


岡本 浩一

リスク心理学入門


前回の『リスク ~神々の反逆』に続いて、リスクについてです。


リスク受容の評価には3つの方法があります。

1つは、専門家による判断。

1つは、リスクが発生するまでのステップを解析し、評価する方法。

もう1つは、リスクとベネフィットのバランスから判断する方法です。


そして、リスク受容に関する要素についてです。

受動的であり、リスクに関するベネフィットが大きい場合にリスク受容はしやすくなります


そしてリスク受容とは、我々の内的なリスクのイメージで行われる、

つまり、心理的な要因で決まってきます

特に、『恐ろしさ』『未知性』の2つの要因が大きくかかわってきます。


こうしたことを理解しておくことは、

過度に副作用などのリスクを恐れるあまり、

治療を受けることに消極的となる患者に、

リスク受容を助け、有効な治療を受けることを了解させる助けになると考えられます。


以下要約です。

リスク受容に関する3つの方式

(1) 専門的判断方式

倫理的基準・質の基準・技術的な基準を用いて判断する
専門的な判断は十分に機能していると期待されるが、さまざまな落とし穴もある

(2) リスク過程解析方式

リスクとなる事象が起こるまでの過程を分析し、その事象がどれぐらいおこりやすいか、
または、起こりにくくするためにはどんなチェックを加えるべきかを検証する。

(3) リスク-利得分析方式

リスクと利得を計算して、指標として表現する


リスクは以下のような要素が受容に影響する。

① 能動的リスクと受動的リスク

受動的か能動的かは主観的な問題であるが、受動的か能動的かな判断で、
受動的なリスクは能動的なリスクに比較してかなりリスク受容されやすい。
能動的なリスクのほうが1000倍のリスクでも受容される傾向がある。

② 利得とリスク受容

利得が大きくなれば、その3乗の大きなリスクでも受容される


上記のような方法で、リスクは評価できるのであるが、
我々の『リスク』に対する反応は、
結局は、我々の『内なるリスクのイメージ』に対する反応であると考えることが妥当である。
リスク受容はすぐれて心理的な要因によってきまるとみなければならないことになる。


リスクイメージの構成因子は以下の因子がある。

(1) 恐ろしさ因子
(2) 未知性因子
(3) 災害規模因子

とくに、恐ろしさ因子と未知性因子が代表的な因子である。


リスクの認知というのは、非常に生起確率の低い事象の認知である。
非常に生起確率が低い場合、正しい認知が得られる可能性は相対的に低くなるところが、
リスク認知の問題の1つである。
同時に、それにもかかわらず、自分の認知が高いと考えている度合いが高い傾向にある。


リスク認知の理論としてプロスペクト理論がある。
確率を伴う選択肢の認知は、
合理的な確率期待値モデルによる判断と一致際ないことが多々みられる。
ポジティブな選択肢の場合には、リスク嫌忌的な認知が、
ネガティブな選択肢の場合には、冒険的な認知が行われやすくなる。
この場合、ポジティブ・ネガティブの差は主観的な問題であるから、
選択肢の内容の提示の仕方、認知の仕方によって、異なってくることがあり得る。

リスク ~神々への反逆


ピーター バーンスタイン

リスク ~神々への反逆


医療において、リスク処理は必須の過程である。

治療や検査が100%望むべき結果をもたらすことはなく、

稀な望まない結果(リスク)が起こりうる可能性をどう対処するかに必ず迫られる。


リスクをどう患者と共有するかは非常に悩ましい問題である。


本著では、ギリシャ・ローマ時代から現在まで、人間はどのようにして『リスク』を捉え、

コントロールしようとしてきたのか、

リスクの謎に挑んだ天才たちの驚くべき人間ドラマを描いていきます。

その歴史を通して、リスクとは何かに迫っていきます。


以下要約です。

『リスク』という言葉は、イタリア語の『risicare』という言葉に由来する。

この言葉は『勇気を持って試みる』という意味を持っている。

この観点からすると、リスクは運命というよりは選択を意味しています


何千年もの歴史と今日われわれが生きている時代とを区別するものは何でしょうか?

現在と過去との一線を画する画期的なアイデアはリスクの考え方に求められるのです。


過去、人類がこの境界を見いだす以前には、未来はそれ以前のかがみであり、

漠然とした神のお告げとか予期しうる事態について独占的に知識を有する占い師が闊歩する時代でした。


現在、リスクをどのように理解し、またどのように計測し、

その結果をどのようにウエートづけるかを示すことによって、

リスクを許容するという行為を今日の西側社会を動かす基本的な触媒行為に変えていきました。

リスクに対処しうる能力と、

そのような能力を備えた上でリスクを取りながら将来に向けての選択を行うことこそが、

経済システムを発展させるエネルギー源なのです。


リスクにかかわる物語は、全般にわたって、

次の2つの対立する考え方をもつ人々の緊張関係で特徴づけられています。

一方は、最善の意思決定は計量的手法と数字に裏付けられており、

過去のパターンに依存していると主張する人々
である。

他方は、その意思決定を、不確実な将来に関するより主観的な信念の程度に基づいて行う人々である。

これは未だかつて決着を見ない論争でもある。


そして、雷光に打たれる確率は極めて小さいが、『多くの人々は、雷の音には過度の恐怖感を示す』。

そして『被害を受けることの恐怖感は、単に被害の大きさだけではなく、

その事象の確率にも比例すべきであり』、これはもう一つの重要な革命といってもよい。

この考え方には、事象の大きさと確率の双方が意思決定に影響すべきであることが示されている。

すなわち、意思決定にはある特定の結果が生起することを希望するその期待の大きさと、

その結果が起こりうる確率に対する信念の程度、という2つの要因が含まれる。


(つまり、リスクの要素は、その事象の影響の大きさと、

その事象の起こりうる確率で構成される。

そして、人々がそのリスクに対してどう考えるかに関しては、

影響の大きさや確率を過去のパターンから推測される数字を重要視する人と、

影響の大きさや不確実性に対する信念を重要視する人に分かれる)


そして、リスク許容行為というのは、将来の結果を確実に知ることはできなくても、

既に行った意思決定から生じるある結果にかけることを意味する。

つまり、リスク管理の本質は、ある程度結果を制御できる領域を最大化する一方で、

結果に対して全く制御が及ばず、結果と原因の関係が定かでない領域を最小化することにある。


後は、『平均への回帰』に関する問題、『不確実性』に関する問題など、

リスクに関する多岐の話題を取り扱っていきます。

2011年3月24日木曜日

誘惑される意志


ジョージ・エインズリー

誘惑される意志


人は、しばしば目先の誘惑=望ましくない選択に負ける。

しかもそれは、無知のせいじゃない。

その誘惑に負けたら自分が何を失うか、どういう結果を招くかは十分承知している。

それなのに、同じ誘惑に繰り返しまける。

ダイエットに、禁煙、定期的な運動に、勉強。

それなのに、これまでの心理学、経済学そのほかのモデルでは、

これは説明できなかった。

本書は、双曲割引という概念を使うことで、これをきれいに説明している。


今回、本書をお勧めするわけではありません。

だって、きちんと読めてません。

っていうか、読んだけど、なにが書いてあるか頭に入ってきませんでした。

なんと、訳者までこういいきっています。

おまけに、著者は必ずしも読みやすい文の書き手ではない。
序文で著者は本書を『会話調』と称しているけど、
一読して『どこが!!?』と思うのが普通であろう。
こんな調子で会話をしたら、みんな逃げ出すぞ。
というわけで、本書は決してするする読める本にはなっていない。

でも心配要りません。

訳者が巻末で内容を要約してくれてます。

とりあえずはこれで十分でしょう!


(1)双曲曲線とは?



人は(ハト程度の動物でさえ)同じものをもらうなら
来月もらうよりも今もらったほうがいいことを知っている。
来年1万円あげるといわれても、いますぐ5千円もらったほうがいい。
1万円が人によって持つ価値は、
それがいつもらえるのかという時間に応じて目減りする。
そしてこれまでの普通の理論では、
一定時間ごとに一定割引ずつ割り引かれて目減りすると考えられていた。

ところが人間に実際にいろいろ実験してみると、
どうもそんな風な価値評価はしていない。
目先ではその割引は大きいけれど、ずっと先の話だとほとんど割り引かれていない。
この割引は、双曲線で示されているものと似ている。
これが双曲割引だ。

そして双曲割引のおかげで、小さい短期的な誘惑は近くに来ると急に大きく見え、
まだ遠くにあるもっと大きな長期的な見返りよりも、
一時的に魅力的に見えてしまう。
これが、人が誘惑に負けるメカニズムだ。


(2)誘惑に勝つための『意志』

だが人は、かならず誘惑に負けるわけではない。
そういう誘惑に対抗するための手口を編み出した。
それが意志というやつだ。
意志力がもっとも要求されるのは、誘惑に負けそうになるときでしょう。

そして意志を大きくするためには、
多くの長期的な見返りをグループ化して足し合わせるといい。
どうグループ化するかにはいろいろなやり方がある。
いろいろ試してみて、納得のいくカテゴリーを作り出して、
目先の誘惑がぐっと魅力的になったときでも耐えられるようにしておくわけだ。

2011年3月19日土曜日

人間この信じやすきもの


T.ギロビッチ

人間この信じやすきもの


原題は『How We Know What Isn't So;

The Fallibility of Human Reason in Everyday Life』
です。


人々が誤った考えを持ってしまうのは、

正しい事実にあっていないからというわけでない。

騙されやすい人や頭の悪い人が誤った考えを持ってしまうわけでもない。

多くの誤った考えはもっぱら認知的な原因によって生じてくるのです。

そんな人間心理について、いったいなぜ迷信・誤信を抱くのかを、

日常生活の数々の実例を用いて分析、整理していきます。


『経験知』を伝える技術では、

その人が持つ『信念』の影響を受けながら、

経験や知識が、ディープスマートを形成していくことを説明していました。

しかし、本著では、この『信念』がいかに、経験や知識の認知に影響を与えるか、

そして、逆に、経験や知識の認知によって、『信念』が変更、強化されるか、

そのシステムが詳細に説明されています。

医師は、自分がどのような『信念』を持っており、

それが、自らのディープスマートの形成にどのような影響を与えているかに

自覚的であるべきです。


認知的な要因について、説明されたのち、最後に、

種々の『非医学的』健康法への誤信

人づきあいの方法への誤信

超能力への誤信

について、解説しており、読み応えがあります。

特に非医学的健康法への誤信は、医者なら、知っておくべき患者心理です。

なぜこんなにも多くの人がこうした高価で、

時には危険でさえある治療法に頼ろうとするのか?

高価がないそうした治療を、

効果があるように感じさせてします何かがあるのです。


以下に、いくつかの認知的要因をまとめておきます。

誤信の認知的要因

1)ランダムデータの誤解釈

私たちは、外界に秩序やパターンや意味を見出しがちな性向を持ち、
物事が不秩序で、混沌として、無意味なままでいることに耐えられない。
人間の本性は、予期できない現象や意味のない現象を嫌うのである。
その結果、私たちは秩序がないところに秩序を『見いだ』そうとし、
偶然の気まぐれだけに支配されているものに意味のあるパターンを発見してしまう。

秩序やパターンを見つけ出したり、事物を関連付けたりする傾向も、
新しい発見や進展にとっては有効である。
しかしながら、問題は、こうした傾向が強すぎるために、
そして自動的に働いてしまうために、
ときおり実際には存在しないパターンや関連性までも見いだしてしまうということである。

『波に乗る』

20回コインを投げて、4回連続で表が出る確率は50%であり、

5回連続は25%、6回連続は10%あるから。

4回連続すると波に乗っている感じがするが、実際はよくあることである。

『偏りの錯誤』

ランダムな分布をしていても、私たちは同一タイプのものの偏りや連続が、

多すぎるように感じられる。

こうしたことが偶然に起きたことを受け入れづらい。

『代表性』

裏と表が半々になると言う大数の法則という典型例を一般化しすぎてしまう

『因果関係の理論づけ』

後付けでこじ付け的な説明をいとも簡単にできてしまう。

それにより間違った考えが補強される

『回帰の誤謬』:

回帰の誤謬というのは、単なる統計学的な回帰現象にすぎないものに対して、

複雑な因果関係を想定したりして余分な説明をしてしまうことを言う


2)不完全で偏りのあるデータの誤解釈

信念と合致する情報を過大評価してしまう。
信念の多くは、二つの変量間の相関関係についてである。
相関関係が成り立つ事例についての情報が過度に重視され、
仮説に合致しない事例についての情報は、否定詞の表現となるため、認知的処理が困難である。
したがって、共変関係を正しく理解することが苦手となる。
肯定的な事例を重視しすぎるために、本来存在しない相関関係を見つけ出してしまう。

そして、ある信念や仮説に関する情報を評価する場合に、
仮説に合致する事例を重視する傾向があるだけでなく、
もともとそうした事例を探す場合にも、
仮説に合致するものだけを探そうとする傾向があることが知られている。

相関関係を評価する必要なデータの一部しか入手できないとき(主に対照群)、
入手できないが重要な情報が存在していることを認めるだけでなく、
そうした情報がどのようなものであるかただしく特徴づけもしなければならない。


3)あいまいで一貫性のないデータの誤解釈

期待や予想、先入観が、新しい情報を解釈する際に影響を与えることは、
人間の判断・推論過程における利点にもなるし、欠点にもなる。
既存の信念に合致する情報は額面通りに行け入れやすく、
反対に、信念に反する情報は批判的に吟味されたり、割り引いて扱われたりする。
そこで一度持たれた信念は、新たな情報が提供されても、簡単には影響されないことになるのである。

人々は、自分の考えに反する情報よりも、
自分の考えを指示する情報をよく覚えていると信じられている。
信念に合致する情報は、信念や仮説を思い起こさせるからである。

『1面性の出来事』と『2面性の出来事』:

2面性の出来事よりも1面性の出来事のほうがより印象に残り誤信を持続させる可能性がある。
期待されることが確認されるか否かいう要因と、
期待が時間的に焦点づけられたものか否かという要因、
起こりうる結果の非対称性(快不快、パターン、定義上、生起率)は
人々の持つ期待や先入観に合致する情報をゆがめる働きをする。
2面性の出来事の場合は、信念に反する情報のほうが特に記憶されやすいが、
巧みに処理され信念に反しないようにされる。


4)誤信の動機的要因:動機によってゆがめられてしまう信念

人々は自分が信じたいとのぞむ事柄を、
ある範囲内とはいえ実際に信じてしまう傾向がある。
自分の好む結論と自分の嫌う結論とに別々の評論基準を用いがちだということである。
自分が信じたいと欲している仮説に対しては、仮説に反しない事例を探してみるだけである。
これは多くの情報が曖昧で多義的な性質を持っていることを考えれば、
比較的達成されやすい基準である。
これに対し、信じたくない仮説に対しては、
そうした忌まわしい結論にどうしてもならざるを得ないというような証拠を探すことになる。
これは、すっと達成が困難な基準である。


5)誤信の社会的要因

うわさを信じる:人づての情報の持つゆがみ

人づての情報に含まれる誤りがしばしば誤信の原因になっている。
誤りを含んだ情報から、正しい信念が作られるはずはない。
私たちがえる結論は、依って立つ情報の正確さによって決められる。
人づての情報は、誇張・省略されたり、有益さと面白さのために脚色されたり、
話し手の満足のために脚色されたりして、ゆがめられる。

情報源をよく確かめる、事実を信じて予測を疑う、誇張と省略に目を光らせる、
生の証言にだまされないようにするといった視点が必要である。


6)過大視されやすい社会的承認

他人はこう信じているだろうと考えていることは、
私たち自身が信じることに大きな影響を及ぼす。

『総意誤認効果』

私たちは、自分自身と同じ考えを他人がどの程度持っているかについて過大視しがちである。
そこで、私たちは、自分自身が持つ信念が実際以上に
社会的にも支持されていると考えることになり、
そうした信念は不当により強固なものになっていってしまう。

『他人からの不適切なフィードバック』

自分の考えが間違っていれば他人からのフィードバックによって
修正されるに違いないと私たちは普通考えている。
しかしこうした修正フィードバックは思ったよりも普通は行われないものである。


最後に、

誤信を持たないための処方箋を紹介します。

1)2×2分割表のほかの3つの部分はどうなっているんだろう?

2)すでに持っている仮説や信念でどんな結果でも説明づけてしまう能力を抑えるために、

逆の結果ならどうだろう、逆の信念だったらどうだろうと考える

3)人づての情報には注意を払う

4)他人からのフィードバックに注意を払う

5)規則性、回帰性に注意を払う

2011年3月12日土曜日

非営利組織の成果重視マネジメント


P・F・ドラッカー/G・J・スターン

非営利組織の成果重視マネジメント

現在も引き続き、

『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』

売り上げを伸ばしているようです。

そこで取り上げられているのが、本ブログでも多く登場している、

ドラッカーという経営思想家の『マネジメント』です。

しかし、もしかしたら、医療関係者には、非営利組織を対象とした、

本著のほうが参考になるかもしれません。


ドラッカーは、以下の『5つの質問』を通して、

『組織の自己評価』を行うことによって、

組織の使命や価値を明確とさせ、

成果に焦点を当てさせ、組織が成果をあげられるようになることを実現させます。


第1の質問:われわれの使命はなにか?

『使命:misson』とは、組織の活動の目的、組織の存在理由。

つまるところ、それをもってして覚えられたいこと。

『ビジョン』とは、組織にとって望ましい未来図を指します。


第2の質問:我々の顧客は誰か?

顧客には、活動対象としての顧客(第1の顧客)と、

パートナーとしての顧客(第2の顧客)の2種類があります。

まずは、自分たちの顧客が誰かを認識することが、次のステップにつながります。


第3の質問:顧客は何を価値あるものと考えているか?

最も重要な質問であるにもかかわらず、

最もなおざりにされている質問でもある。

リーダーは、これに勝手に自分で答えてしまう傾向がある。

顧客の声に耳を傾け、顧客は正しいとすることが原則である。


第4の質問:我々にとっての成果はなにか?

成果とは、常に組織の外になる。

つまり、人々の行動、境遇、健康、希望、

そしてとくに彼らの適性と能力の向上や変化によって成果を見ることができる。

使命を達成するため、何が価値があることが判断し、

成果を得るために、資源を集中させる必要がある。

第1の顧客の声に注意深く耳を傾け、

そして、成果は、定量的、または、定性的に評価できなければならない。


第5の評価:我々の計画はなにか?

そして、最後に、具体的な目標、つまりゴールを決定する。

目標は具体的、かつ評価可能でなければならない。


以上の5つの質問を、繰り返しながら、組織は行動し、成長していくことになる。

2011年3月5日土曜日

まぐれ


ナシーム・ニコラス・タレブ

まぐれ

原題は『Fooled by Randomness』です。

大学では不確実性の科学を教え、

マーケットでは特異なヘッジファンドを運用している投資のスペシャリストが、

トレーディングと人生において

『運』と『実力』の区別がどれほど難しいか、

また、人間はなぜ自分の知識を過大評価するようにできているかについて、

行動経済学、心理学、哲学などによって明らかにしていきます。


『運』を『能力』と取り違え、

『偶然性』を『必然性』と取り違え、

『確率的』を『確定的』に、『信念』を『知識』に、

『理論』を『現実』に、『逸話』を『因果』に、

『予測』を『予言』に取り違えてしまう、

そんな人間について言及します。


医者もそんな人間の代表です。

自然経過を治療効果に取り違え、

治療効果を、確定的に、大きく見積もり、

自分の信念を、医学知識に置き換え、

理論を現実だと取り違え、

逸話的な例を法則だと考え、

単なる予測を予言として、患者に話す。


著者の話している内容は、多岐にわたり、半分も理解できていませんが、

その根底で一貫して主張されている内容はすんなり入ってきます。

おそらくは、巻末の多くのリファランスを読めば、

もっと多くのことが理解できるようになるのでしょうが、

自らの未熟を思い知らされます。


ランダム性、バイアス、確率、リスク、こうした問題に興味のある方、

逆に、まったくそういったことに無意識的である医師に、

読んでほしい一冊です。

2011年2月26日土曜日

キャズム


ジェフリー・ムーア

キャズム


マーケティングの本です。

前半は、『キャズム』についての説明がなされ、

後半は、『キャズム』を超えるための、戦略について書かれています。

正直、後半はついていけませんでした。

しかし、前半だけでも、一読の価値はあると思います。

ぼくは普段は、アーリー・マジョリティーか、レイト・マジョリティーで、ごく平均的です。

仕事に関しては、時に、アーリー・アドプターかもしれません。

研究者としては、イノベーターであるべきでしょうが、

臨床家としては、アーリー・アドプターからアーリー・マジョリティーが望ましいでしょうか?

医療にキャズム理論を汎用するのは無理がある?





まずは、『キャズム』についてです。

例えば、電気自動車を例にとってみるとすると、

こうした新しいテクノロジーには全く興味を示さない人は、

『ラガード』(無関心層)にあたります。

電気自動車の効用が証明されて、電気自動車向けのサービスステーションが

町中に見られるようになったら買うなら、その人は現実的な購入者、

すなわち『アーリー・マジョリティ』である。

ほとんどの人が電気自動車に乗り換えて、ガソリン自動車を運転することが

不便になってきたら買うなら、その人は追随者、

つまり、『レイト・マジョリティー』である。

逆に、近所でまだだれも電気自動車を持っていない時に買おうとする人は

『イノベーター』(革新者)、

あるいは『アーリー・アドプター』(先駆者)である。

そしてそれぞれは、概ね、標準偏差に従って区分される。


そして、アーリー・アドプターとアーリー・マジョリティーの間を分かつ深く大きな溝、

それがすなわち『キャズム』である。

これは、テクノロジー・ライフスタイルにおいて、

超えるのが最も難しい溝である。

そしてこの溝は、通常は見過ごされているだけに、危険である。


キャズムを超えるときの大原則は、

特定のニッチ市場を攻略地点と設定し、

もてる勢力を総動員してそのニッチ市場を支配することである。

その後、その具体策が展開されます。

2011年2月17日木曜日

『経験知』を伝える技術


ドロシー・レナード+ウォルター・スワップ

経験知』を伝える技術 ディープスマートの本質


『経験知=ディープスマート』は、その人の直接の経験に立脚し、

暗黙の知識に基づく洞察を生み出し、

その人の信念と社会的な影響により形づくられる強力な専門知識をさす。


医師の診療技術・知識=ディープスマートはどのように培われ、

それを効率よく移転(教育)するためには、どうしたらよいのか、

という話です。


キーワードは、『知識』『経験』『信念』『レセプター』です。

つまりは、大量の『情報』の海の中から、

その人が『経験』により培ったパターン認識能力によって、

『ディープスマート』を築いていく。


そしてどのような『情報』を取捨選択して『ディープスマート』を築いていくかには、

経験や文化によって培われた『信念』が大きく関与する。


『ディープスマート』を転移するためには、

相手に知識転移のための『レセプター』が必要である。

ということになります。


以下要約です。

エキスパートのディープスマートとは?

複雑な分野では、ディープスマートを築くのは約10年かかる。

エキスパートは、文脈に基づく抽象化された深い知識を持っているので、

基本的な事実関係をいちいち検討しなくても、迅速に決定を下せる。

直観とは、迅速で効率的なパターン認識である。


ディープスマートの組み立てられ方;経験を通じて学ぶ

個人も組織も、時間がたつにつれて経験のレパートリーが増える。

1つの極端な経験しかないとそれ以外の状況ではうまくいかない。

第1にレセプター、第2にモチベーション、第3にフィードバック。

ディープスマートを育むうえで欠かせないのは、計画的な練習をする意欲。

新しい知識を吸収するには、脳内にしかるべきレセプター(受容体)がなくてはならない。

言い換えれば、新しい経験を受け入れる心理状態にあり、

あらかじめ十分な精神度台を持っている必要がある。

その土台がないと、新しい情報はただの情報にとどまり、知識に転換しない。


ディープスマートの形成には信念が関与する

知識とは『正当化された真なる信念』といえる。

自分は自分の個人レベル、専門分野レベル、組織レベル、文化レベルの

中核的信念を真実だと信じており、しかもそうした信念はおおむね暗黙のもので、

変化しにくい。それをほかの信念の体系とすり合わせるのは難しい。

だが、自分の信念が自分だけの固定観念にすぎないとわかれば、議論と相互理解への道が開ける。

あるグループやそのメンバーに強くあこがれると、そのグループは私たちの『部族』になる。

『部族』は私たちの中核的な信念や行動、知識に強い影響を及ぼす。


ディープスマートを移転するためには?

個別具体的な指示や経験則も、学習者の頭にレセプターをつくる役に立つかもしれない。

育成効果が低い順番に、

端的な指示/説明/レクチャー

⇒経験則

⇒体験談

⇒ソクラテスメソッド(対話)

⇒実践を通じた学習(指導のもとでの経験)

指導のもとでの経験が1番重要。

指導のもとでの経験(練習、観察、問題解決、実験)は、

ディープスマートの発達と移転を促進する。

よく考えられた練習を指導するコーチは、練習すべきスキルを選び出し、

学習者に反省を行うように促し、指針となるフィードバックを行う必要がある。

抜粋終了


医師としての『ディープスマート』を少なくとも10年かけて形成していくわけですが、

単に経験をつんだり、知識を詰め込むだけではだめなわけです。

その過程で自分がどんな『信念』に支配されているかに意識的であり、

『信念』の修正が必要であればそうする必要があります。

そのもとで、意識的に、経験、知識を積み上げていく必要があります。

その際に、同じ信念を持ち、ディープスマートを持っているコーチの

指導の下で経験をすることが、効率よく、ディープスマートの形成に

つながるのだと思います。

2011年2月10日木曜日

ブルー・オーシャン戦略


W・チャン・キム + レネ・モボルニュ

ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する


なにか戦略論の本を1冊勧めるとしたら、本著を薦めます。

わかりやすく、日常にも応用しやすいからです。


レッドオーシャンとは、既知の市場空間を指し、競合他社を打ち負かすために、

既存の需要を引き寄せるために。差別化や低コストのどちらかの戦略を選ぶ

厳しい競争が必要となる市場を指します。

一方、ブルーオーシャンとは未知の市場空間であり、

競争を無意味なものにし、新しい需要を掘り起こし、

差別化と低コストをともに追求することができます。

本著では、競争のない市場空間を切り開き、

ブルーオーシャンを開拓することを勧めます。

最高の戦略は競争せずにすむことということです。


ブルーオーシャンを開拓するためにまずは、

戦略キャンパスを描くことが第1ステップです。

これは実際に具体例を見てもらえばすぐに書き方は理解できます。


次に新しい価値曲線を描くために、

『減らす』『取り除く』『増やす』『付け加える』の4つの

マトリクスを考慮します。


競合他社にない新しい要素を『増やし』『付け加え』、

それに集中するために、既存の要素を『減らし』『取り除く』ことを考えます。


新しい要素を生み出すためには、

① 代替産業に学ぶ

買い手の立場に立って、直観的に代替産業を選ぶ、そしてその時の判断ポイントを考える

② 業界内のほかの戦略グループから学ぶ

価格とパフォーマンスでグループは分けられる、買い手が選ぶ際の判断ポイントは?

③ 買い手グループに目を向ける

購買者、利用者、影響者、いままでにない買い手グループに目を向けようとしてみる

④ 補完財や補完サービスを見渡す

補完サービスを見直し、トータルソーリューションの改善を行う

⑤ 機能志向と感性志向を切り替える

⑥ 将来を見通す

事業に決定的な意味合いを持ち、後戻りしない、はっきりした軌跡を描く

といった視点から分析して考え出します。


その後、ブルーオーシャン戦略を実行するための方法が展開されていきます。


例えば総合病院でも、機能志向から、感性志向に切り替えて展開すれば、

ブルーオーシャンを行けそうな気がします。

ただ、既存のどんな要素を『減らし』『取り除く』かは、

難しいし、一筋縄ではいかなさそうですが。。。

2011年2月4日金曜日

クチコミはこうしてつくられる


エマニュエル・ローゼン

クチコミはこうしてつくられる


以前に紹介した『急に売れ始めるにはワケがある』の類似書で

特に、クチコミに関することで、より詳細で具体的に書いてあります。

原題は『The Anatomy of Buzz』で、

バズとは、まぁ、クチコミということです。


情報を以下に伝播させるかということに

興味がある人は必読です。


あなたの周りにいるハブは誰でしょうか?

あなたが思っている以上に、弱いつながりは強く、

条件が整えば、クチコミの情報の伝播力は強力です。


以下は要約です。

みえないネットワーク;なぜネットワークが重要なのか

顧客にはあなた方が言うことはほとんど聞こえていない。

しかも、顧客は疑い深い。

逆に、顧客同志はつながっており、

しかも、現在は、新しいネットワーク、インターネットが普及している。

なぜ人は話すのか?

私たちは話すようにプログラムされている

結びつくために話す

世界を有意義にするために話す

リスク、コスト、不確実性を減らすために話す

経済的に意味があるから話す

不安を和らげるために話す


したがって、クチコミは重要なのです。

クチコミには起点となる人、ハブが存在します。


ネットワークのハブ

通常のハブ VS メガ・ハブ

エキスパートハブ and 社会的ハブ

ハブは、新し物好きで、つながりが多く、旅行が好きで、

情報に飢え、おしゃべり、メディアにさらされているといった特徴を持つ。


バズに影響を及ぼす社会的ネットワークの10の基本原則

1)ネットワークは目に見えない

2)人は自分と似ている人と結びつく

3)お互いに似ている人はクラスターを作る

4)バズは共通のノードを通じて広がる

5)情報はクラスター内に閉じ込められる

6)『ネットワークのハブ』と『コネクター』はショートカットを作る

7)私たちは身の回りの人と話す

8)弱い結びつきは驚くほど強い

9)インターネットは弱い結びつきを育てる

10)ネットワークは異なる市場をつなぐ


最後に、バズを作り出す方法についてです。

正しい製品を持っているか?;Step1感染型製品

バズとなりえる、感染型の製品である必要がある。

①(感情的な反応を引き起こす)品質の高い製品やサービスを提供しているか?

② 使った人の生活はよくなるか?人々がしていることに適合しているか?

③ 製品は人から見られるものか?消費する時、よりみられるようにできるか?


正しいアプローチができているか?:Step2蛙跳びさせる

バズを加速するために、蛙飛びさせる必要がある。

① ネットワークに配慮しているか?

② 顧客が何を言っているか知ろう?

③ バズを聞くためにできる限りのことをしよう


ネットワークのハブとうまくやっているか?:Step3ネットワークと協力する

① ネットワークのハブを識別しよう

② より多くのハブを見つけるために、利用可能なすべての手法を使おう

③ ハブを追跡しよう

④ ハブが必要としているものを提供しよう


バズをつくるために必要なすべての手法を考慮したか?

Step4能動的に種をまく、よいストーリーを作る

Step5バイラルマーケティング

2011年1月28日金曜日

新たな疫病 『医療過誤』


ロバート・M・ワクター、ケイヴェ・G・ショジャニア

新たな疫病 『医療過誤』


本書の特徴

amazonより抜粋

1: 世界最高の医療水準を誇る米国で死因の第5位をしめ、

流行病のように蔓延している「疫病」である医療過誤を、

冷静にまた学術的に高度なレベルを保ちながらも、

医学の専門用語をできるだけ少なくして、一般読者にも読みやすい本として書かれています。

2: 医療過誤の豊富な事例を正確に知り、

さらにその原因を科学的に客観的に分析した医療過誤ノンフィクションは、日本ではまだありません。

3: 医療現場のプロたちが何を考え、感じ、いかに行動するのか、その内幕を知ることができます。

また「付録IV:病院、医療グループ、医師にしておきたい質問」に見られるように、

本書の内容は患者にとって医療事故発生予防に役に立ちます。

4: 医療過誤は誰かひとりの責任追及ではなくなりません。過ちをおかしてしまう、

事故をおこしてしまうという、人間にとって不可避な事象をどのように防止するか。

医療における安全性についての正しい認識をもち、「システム思考」を身につけ、

医療過誤のおこらないシステムつくることの重要性を示します。


本書の冒頭、ある若手医師が救急車手配の指示でミスをしたために、

搬送中の患者が大変な事態に陥ってしまいそうになるエピソードが紹介されています。

救急車内での若手医師の焦り、そして後に自分のミスを知ったときのショック、

そんな心の動きがひしひしと伝わってくる。

まるでテレビドラマ「ER」の一場面を見ているようだ。

それもそのはず、その若手医師というのは、著者の1人ボブ・ワクター教授の若かりし頃なのである。

各章の冒頭には必ずこのような医療現場の出来事が生き生きと描かれる。

そして、出来事に対する冷静な分析と考察、それをふまえた上での再発防止への提言と続いていく。

そこには巷のジャーナリズムで伝えられる、

登場人物を善と悪に単純に二分して語るような安易なストーリーは存在しない。

おそらくそれはこの2人の著者が、現役の医師であり、医学教育者であり、

しかも病院の安全管理責任者であるというところによると思う。

要するに「医療過誤なんて、そんなに単純なもんじゃない」のである。

医療過誤の現場をよく知る立場の人間が、本当にあるべき対策について書いたら、

どのようなものになるのか。それが本書である。

抜粋おしまい


以下は要約です。

(1)患者の取り違え

スイスチーズ理論:小さなミスであっても、

チーズの穴がたまたま一直線にそろってしまうと、そこを『過誤』が通り抜けることになる。

(2)薬剤処方過誤

対策:電子処方箋システム

(3)薬物誤用

対策:バーコード化

落とし穴:規則破りのルチーン

(4)診断の間違い

対策:反復性仮説検証

(5)左右の取り違い

対策:手術箇所にサインをする

(6)手術のときの置き忘れ

(7)手技の練習

(8)申し送りの間違い

(9)初期研修の問題

(10)チームワーク(コミュニケーション不足)

(11)医療過誤と報道

(12)過誤報告システム

(13)医療過誤と裁判


各章の冒頭では、毎回、かなりリアルな実例をもとにした、

医療ドラマが展開され、臨場感たっぷりで読まされます。

おそらく、精神的にネガティブな時には、

かなり自分の医療環境と結び付けられて、怖くなるでしょう!

しかし、多くの実例は2000年以前の症例であり、

今の日本の医療環境とは異なります。

と同時に、アメリカの病院って怖い!って感じます。

現在の日本の同規模の病院ではありえないような環境です。

まぁ、医療過誤が起こってる例ばかりを取り扱ってるからなんでしょうが。

まだまだ医療過誤を減らすために、システマティックな取り組みが、

必要なようです。

患者さんを守ると同時に、

個人の努力では避けられないうっかりミスを減らし、

医師が本当の意味で医療に集中できるためにも、

こうしたシステムづくりに協力していく必要を強く感じました。

2011年1月21日金曜日

デザイン・ルールズ『文字』


伊達千代&内藤タカヒコ

デザイン・ルールズ『文字』 文字とデザインについて知っておきたいこと


プレゼンテーションとそのスライドづくりについて以前に、

『プレゼンテーションZEN』を紹介しました。


スライド作りで、デザインに気を使うことは、重要なことですが、

学会発表に使用する症例発表や、研究発表では、

写真を利用することも困難であったり、

シンプルにして、情報を簡略化することも困難です。

(僕は、学会総会の研究発表のスライドで、

iStockphotoの写真を表紙に使ったことはあります。)


おそらく、グラフィックで1番使用することになるのは、

文字そのものではないでしょうか?


本著では、グラフィックデザインにおける文字の重要性に着目し、

文字の可能性を探るべく、

デザインをするうえで知っておきたい、

押さえておかなければならない

ルールを5つのStepに分類し、

わかりやすく説明してくれます。


Step1:文字を知る

セリフ体とサンセリフ体、明朝体とゴシック体

スライドにあった書体を選択することはまず第一歩です。


Step2:文字とイメージ

高級感や伝統、親しみやすさと柔らかさ、まじめさと信頼感、

洗練された印象、

見た人にどんなイメージを伝えたいかによって、

選択する文字のデザインは異なります。


Step3:読みやすく組む

読みやすいかどうか、とことん気にする必要があります。

書体や文字のサイズに始まり、

文字と文字の間隔、

行と行の間隔

サイズの変化、配置の仕方

などに注意していきます。


Step4:強調する

人は何か伝えたいことがあるからこそ、文章を書きます。

見た人の心の中に強い印象や、特定の感情を抱かせること、

それが最終的なゴールです。

そのためには読みやすい文章から一歩進めて、

表現することが必要になります。

サイズ対比、ウエイト対比、書体対比、色による対比

などといったテクニックが紹介されます。


Step5:文字とレイアウト

プレゼンテーション、ポスター、書籍、

それぞれによって、目的が異なります。

目的にあったレイアウトが必要です。

2011年1月19日水曜日

医療戦略の本質


マイケル・E・ポーター

医療戦略の本質-価値を向上させる競争


『病院ランキングってあるけど、評価基準がよくわからないし、

評判ってそもそもどうなの? ランキングと診療レベルって一致するの?』

『患者さんを紹介しようにも、標榜科以外で判断しようがない。

どこがすぐれた診療をしているかなんてわからない』

『いったい自分の診療レベルはどうなの?』


この疑問はどれも、診療レベルがきちんと評価されていないことが原因です。

どうしたら正常な医療の競争がおこなわれるのでしょうか?

その答えを本著が示してくれるはずです。


著者はマイケル・E・ポーター、ハーバードビジネススクールの教授です。

『競争の戦略』の著者で、これは、ビジネス界ではバイブル的な教科書で、

この功績で30代にしてハーバードの教授となっています。

そんなポーター教授が、ここ5-10年、医療業界ではどうして改革がすすまないかを

研究しています。

他の産業では、イノベーションがおこり、大きなコストダウンが起き、

合わせて質の向上もみられるのに、どうして医療では、コストは膨れ上がる一方で

質の向上はたいして見られないかを解き明かします。


それは、医療でも競争は行われているが、

ずばり『競争の種類』を間違っているからであり、

医療を真に改革する唯一の方法は、競争の本質そのものを改革することであるといいます。


そのように医療を転換するためには、

患者にとっての医療の価値を向上させるような 競争を起こすことが必要であり、

医療における価値とは、

『経費1ドルあたりの健康上のアウトカム』であると説明しています。


そして診療実績による競争を行うために、

第1歩は『診療実績を公表する』としています。


考えてみれば、診療実績を出してもおらず、それを評価もしていないことは、

驚愕の事実であるといえます。

どんな治療法がいいか、病院や、学会で喧々諤々の議論を行いながら、

実は、診療実績を出してさえいないのです。

冒頭の疑問の多くも診療実績を出していないことに尽きます。


ただし、患者さんが、診療実績で医療機関を選択することが、

はたして本当に、患者さんにとって幸せなことかと言われれば、

なんとなくそれは違うと思います。

医療とはそういった質のものではないでしょう。

しかし、医師が、医療実績を把握し、

その改善に努力することは少なくとも必要な気がします。


今回は、とても量が多くて、要約できないです!

『個々の医師の取るべき戦略』から、いくつか紹介します。


・診療は、医師にとっての利便性ではなく、

患者にとっての医療の価値に基づいて行われなくてはならない。

・医師の業務は専門性を披露することではなく、病態に対応することである。

医師は、自分がどのような事業にかかわっているかを理解しなくてはならない。

・患者にとっての価値は、特定の病態に対する専門知識、診療経験、

および患者数によって高められる。医師は、すべての診療分野に広く浅くかかわるのではなく、

じぶんがかかわる病態を絞り込み、真に優れた実績を上げなくてはならない。

・医療の価値を最大化できるのは、フリーエージェントとして行動する個人ではなく、

統合型のチームである。医師は、自分がどのチームに属するか、あるいはかかわるかを理解し、

それがチームとして機能するようにしなくてはならない。

・すべての医師は、診療実績に対する説明責任を持たなければならない。

直感や個人的な経験に頼るだけではもはや不十分である

・良好な診療実績を示せない医師に医療を提供する権利はない。

信頼に足る評価ができるようになった時点ですぐに、

診療実績を患者、他の医療提供者、保険者に公開すべきである。

・患者の紹介は診療実績の優劣に基づくべきである。

また、紹介先の医療機関が、

ケアサイクルにかかわる機関全体と情報交換や統合型の診療が行えるかどうかも重要である

・すぐれた診療には、電子記録および情報交換、情報供給の能力が不可欠である。

真剣にITを導入しない限り、その実現は難しいだろう。

・すべての医師は、診療実績、診療経験、診療方法及び患者属性の評価を基にした体系的な方法で、

自分自身の医療提供プロセスを向上させる責任を持つべきである。

・医師は、知識の習得や診療のよりよい統合のために、

自分の診療分野において優れた医療提供者との提携や協力を模索しなければならない。