2011年1月19日水曜日

医療戦略の本質


マイケル・E・ポーター

医療戦略の本質-価値を向上させる競争


『病院ランキングってあるけど、評価基準がよくわからないし、

評判ってそもそもどうなの? ランキングと診療レベルって一致するの?』

『患者さんを紹介しようにも、標榜科以外で判断しようがない。

どこがすぐれた診療をしているかなんてわからない』

『いったい自分の診療レベルはどうなの?』


この疑問はどれも、診療レベルがきちんと評価されていないことが原因です。

どうしたら正常な医療の競争がおこなわれるのでしょうか?

その答えを本著が示してくれるはずです。


著者はマイケル・E・ポーター、ハーバードビジネススクールの教授です。

『競争の戦略』の著者で、これは、ビジネス界ではバイブル的な教科書で、

この功績で30代にしてハーバードの教授となっています。

そんなポーター教授が、ここ5-10年、医療業界ではどうして改革がすすまないかを

研究しています。

他の産業では、イノベーションがおこり、大きなコストダウンが起き、

合わせて質の向上もみられるのに、どうして医療では、コストは膨れ上がる一方で

質の向上はたいして見られないかを解き明かします。


それは、医療でも競争は行われているが、

ずばり『競争の種類』を間違っているからであり、

医療を真に改革する唯一の方法は、競争の本質そのものを改革することであるといいます。


そのように医療を転換するためには、

患者にとっての医療の価値を向上させるような 競争を起こすことが必要であり、

医療における価値とは、

『経費1ドルあたりの健康上のアウトカム』であると説明しています。


そして診療実績による競争を行うために、

第1歩は『診療実績を公表する』としています。


考えてみれば、診療実績を出してもおらず、それを評価もしていないことは、

驚愕の事実であるといえます。

どんな治療法がいいか、病院や、学会で喧々諤々の議論を行いながら、

実は、診療実績を出してさえいないのです。

冒頭の疑問の多くも診療実績を出していないことに尽きます。


ただし、患者さんが、診療実績で医療機関を選択することが、

はたして本当に、患者さんにとって幸せなことかと言われれば、

なんとなくそれは違うと思います。

医療とはそういった質のものではないでしょう。

しかし、医師が、医療実績を把握し、

その改善に努力することは少なくとも必要な気がします。


今回は、とても量が多くて、要約できないです!

『個々の医師の取るべき戦略』から、いくつか紹介します。


・診療は、医師にとっての利便性ではなく、

患者にとっての医療の価値に基づいて行われなくてはならない。

・医師の業務は専門性を披露することではなく、病態に対応することである。

医師は、自分がどのような事業にかかわっているかを理解しなくてはならない。

・患者にとっての価値は、特定の病態に対する専門知識、診療経験、

および患者数によって高められる。医師は、すべての診療分野に広く浅くかかわるのではなく、

じぶんがかかわる病態を絞り込み、真に優れた実績を上げなくてはならない。

・医療の価値を最大化できるのは、フリーエージェントとして行動する個人ではなく、

統合型のチームである。医師は、自分がどのチームに属するか、あるいはかかわるかを理解し、

それがチームとして機能するようにしなくてはならない。

・すべての医師は、診療実績に対する説明責任を持たなければならない。

直感や個人的な経験に頼るだけではもはや不十分である

・良好な診療実績を示せない医師に医療を提供する権利はない。

信頼に足る評価ができるようになった時点ですぐに、

診療実績を患者、他の医療提供者、保険者に公開すべきである。

・患者の紹介は診療実績の優劣に基づくべきである。

また、紹介先の医療機関が、

ケアサイクルにかかわる機関全体と情報交換や統合型の診療が行えるかどうかも重要である

・すぐれた診療には、電子記録および情報交換、情報供給の能力が不可欠である。

真剣にITを導入しない限り、その実現は難しいだろう。

・すべての医師は、診療実績、診療経験、診療方法及び患者属性の評価を基にした体系的な方法で、

自分自身の医療提供プロセスを向上させる責任を持つべきである。

・医師は、知識の習得や診療のよりよい統合のために、

自分の診療分野において優れた医療提供者との提携や協力を模索しなければならない。

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