2011年9月30日金曜日
ポジティブな人だけがうまくいく3:1の法則
バーバラ・フレドリクソン
ポジティブな人だけがうまくいく3:1の法則
基本的に、自己啓発本はあまり好きではありません。
あまりにも内容が科学的ではなく、
どうしても胡散臭く感じてしまうからです。
しかし本書は、自己啓発本というより『ポジティブ心理学』という
分野からの科学的、かつ実用的な内容であり、
勧められる1冊だと思います。
本書の内容は、医療で言うところの、認知療法に通じるものを感じました。
医療において、認知療法は確立した治療として1分野を築いています。
それは、科学的に、方法論もその効果も充分実証されているからです。
うつ病の人が自ら認知療法に取り組むために書かれた本として
『嫌な気分よ、さようなら』があり、すすめられます。
さて、本書は、病気まではいかないまでも、
ポジティブな気持ちと、ネガティブな気持ちのバランスが悪くなったときに
どんな悪影響があるかから始まり、
ポジティブな気持ちを増やすためにはどうしたらいいか、
ネガティブな気持ちを減らすにはどうしたらいいか、
までに言及していき、その内容は、十分に科学的と言え、
こうした自己啓発に類似した内容の本としては、
医師としても十分勧められる内容になっていると思います。
ネガティビティとは
自己否定的な心の状態で考えを支配し、判断を左右する影響があります。
ポジティビティとは
幅広い肯定的な感情(喜び、感謝、安らぎ、興味、希望、誇り、愉快、鼓舞、畏敬、愛)です。
ポジティビティは
① 気分がいい
② 思考の幅、視界に入る可能性の範囲を広げてくれる
③ 未来に最良の結果をもたらす
④ ネガティビティにブレーキをかける
⑤ ティッピングポイントをもつ(効果は非線形である)
⑥ 増やすことができる
といった効果があります。
ポジティビティとネガティビティの比をP/N比といい、
3:1がティッピングポイントです。
これを超えるとポジティビティの上昇スパイラルに突入します。
最適なポジティビティ比は4:1。
大多数の人のポジティビティ比は約2:1。
うつ病などの病的なポジティビティ比は1:1以下となります。
本書の中でポジティビティ比の自己診断テストが紹介されており、
自分のP/N比を知ることができます。
そして、ネガティビティを減らすための方法として、
認知行動療法的アプローチ
① 典型的なネガティブ思考の例を書き出す
② 徹底的に確信に満ちた声でそれに反論する
○ 有害な反芻に気付き、健全な方法で気持ちをそらす
アルコールや食べ物やメディアではなく、運動や読書、会話など
○ 可能であるなら状況を少し手直しする
ポジティビティを増やす方法として、
日々遭遇する状況に、もっと頻繁にポジティブな意味を見いだすことがカギになる
恵まれている点を心に留める、
自分のした親切を認識する、
好きなことに夢中になる、
将来を夢見る、
自分の強みを生かす、
他者との絆を作る、
自然とのつながりを持つ
○ 瞑想する
① 静かになれる場所で、リラックスした姿勢で座り、眼を閉じる
② 何回か深呼吸をして、自分の呼吸を観察する
③ 意識があちこちにさまよったら、再び呼吸に意識を戻す
④ 意識がひきこまれたら、柔らかい言葉で考えや感情を表現し、今の瞬間に立ち戻る
⑤ 家族など暖かい感情をもつ存在をイメージする
⑥ 愛する人のイメージは手放して、感情だけを保つようにする
⑦ その温かい感情を自分自身に向ける
⑧ 最終的には、他人、町、地球とイメージを広げていく
2011年9月9日金曜日
『やればできる!』の研究
キャロル S.ドゥエック
『やればできる!』の研究
人間の成長や教育に対して、信念がどう影響するかという内容です。
『こちこちマインドセット』を『しなやかマインドセット』に変えることによって、
人は変わることができ、成長できるようになることを説明します。
『こちこちマインドセット』fixed-mindset
自分の能力は石板に刻まれたように固定的で変わらないと信じている人
自分の能力を繰り返し証明せずにはいられない
自分が他人からどう評価されているかを気にする
つまずいたらそれで失敗、努力は忌まわしいこと
『しなやかマインドセット』growth-mindset
人間の基本的資質は努力次第で伸ばすことができるという信念
うまくいかないときこそ、粘り強くがんばる
自分を向上させることに関心を向ける
成長できなければ失敗、努力こそが人を賢く、有能にしてくれる
ほとんどの人が両方のマインドセットをもっている。
同じ人でも分野ごとにマインドセットが異なる場合もある。
能力が伸ばせると信じている分野の能力は、実際に伸びていく。
マインドセットは自分の意思で選び取ることができる。
認知療法では、非効率な自動思考に、注意を払い、意識を傾けるように導くことから始まります。
そして、最終的には、非効率的な自動思考を引き起こす
『私は無能だ』や『私は愛されない』といった信念を変更することを目標とします。
本書では、『こちこちマインドセット』におちいっている人を認知療法で救い出すことはできないと言いますが、
ぼくは、認知療法的アプローチで修正可能だと感じました。
むしろ能力に関して『こちこちマインドセット』がある場合は『私は無能だ』という信念がさらに根底に存在し、
対人関係に関して『こちこちマインドセット』がある場合『私は愛されない』という信念が根底にあり、
最終的には、そこまで掘り下げて信念を修正することが、
本当の解決につながるのかもしれないと感じました。
いずれにせよ、『こちこちマインドセット』という信念の存在に気づき、
それを修正することは、学習や、成長において重要な概念であることは確かなようです。
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