2011年10月25日火曜日

リスクにあなたは騙される


ダン・ガードナー

リスクにあなたは騙される―「恐怖」を操る論理


リスク 神々への反逆』『リスク心理学入門』に続いて、リスクについてです。

本著が一番読みやすいかもしれません。

以下のような、プロローグから始まります。

プロローグ

9月11日、その後多くの人は飛行機を避け、車を移動手段として使用した。
しかし、実際には、飛行機による移動のほうが車の運転より安全なのである。
ある論文では、米国人の飛行機から車への移行は一年間続いた。
飛行機から車への移行の直接の結果としての車の衝突で死亡した米国人の数を算定した結果、1595人であった。
9月11日の不運なフライトの総搭乗員数の6倍である。
こうした行動の原因は恐怖である。


そして、『リスク』が社会に及ぼす影響と、

それに関連する『恐怖』に関して言及していきます。

はじめにどうして社会が過剰にリスクを恐れるようになったのか?を考察し、

その理由として、『私利』『文化』を挙げます。

次にリスクに関する心理学的要因として、『感情』『理性』が挙げられます。

そして感情がいかにリスクの処理に影響していくかに迫っていきます。


以下、要約です。

恐怖は建設的な感情になりうる。
何らかのリスクを懸念しているとき、より多くの注意を払い適宜行動に出る。
恐怖のおかげで私たちは生き延び反映し続けて生きた。
人類が存在しているのは恐怖のおかげだと言っても過言ではない。
しかし『いわれのない恐怖』は別問題である。
私たちは歴史上もっとも健康で、最も裕福で、最も長生きな人間である。
しかし、私たちはますます怖がるようになりつつある。
これは現代の大きなパラドックスの一つである。
私たちがリスクについて考えたり行動したりすることの多くは意味をなしていない。
リスクに関する判断はおかしくなり、致命的な結果になることもある。
したがって、なぜこれほど頻繁にリスクを誤って受け取るかを理解することは重要である。どうして私たちは急増する比較的小さなリスクを恐れるのか?
逆に、どうして頻繁に大きな脅威を平気でやり過ごすのか?
どうして『恐怖の文化』を持つことになったのだろうか?

答えの一部は私利にある。
恐怖は売り物になる。恐怖はもうかる。
恐怖は素晴らしいマーケティングツールである。
だから、テレビをつければ、いつも恐怖が利用されている。
政治家やメディアも同様である。

次の要因として、文化(カルチャー)がある。
いろいろなリスクを恐れる、あるいは関心ないものとして退けるかどうかは、文化的価値によることがよくある。
いったん信念が出来上がると、私たちは見聞きすることを偏った方法でふるいにかけ、自分の信念が正しいことが証明済みであると思えるようにする。
これを確証バイアスとよぶ。
信念を共有する人々が集まってグループを形成すると、自分たちの信念が正しいことにいっそう自信を深めものの見方がさらに極端になる、これを集団極性化と呼ぶ。
確証バイアスと集団極性化、文化を合わせると、私たちは、どのリスクが再考に値しないのかに関して、なぜ人によって完全に異なった見解に行きつくのかを理解し始める。

しかしリスク理解における心理学の役割は、これが出発点に過ぎない。
すべての人の脳は2つの思考システムを有している。
この2つは感情と理性として知られている。
言い換えるなら、腹と頭である。
理性は、ゆっくり動く。それは証拠を調べる。それは計算を行い塾考する。
理性が決定を下す時、言葉にして説明することは容易である。
感情はまったく異なる。
理性と違って意識的に認識することなく働き、稲妻と同じくらい早い。
感情は、予感や直感として、あるいは不安や心配、恐れなどの情緒として経験する即座の判断の源泉である。
感情から生まれる決定は言葉で説明することが難しい。あるいは不可能でさえある。
感情の一つの働きとして、経験則がある。
利用可能性ヒューリスティックとも呼ばれる。
その経験則とは、何らかの例が簡単に思い出されれば、それは一般的なものに違いないということである。
人は1%と表現されるより100に1つといわれるほうがずっとリスクが大きいと判断する。

大惨事の可能性、馴染み、理解、個人による制御、自発性、子供、未来の世代、犠牲者の身元、極度の恐怖、信用、メディアの注目、事故の歴史、公平さ、利益、復元性、個人的なリスク、出所、タイミング。こうした要素が、リスクの認知に影響する。
しかし限界がある。結局は判断は無意識であり、腹はブラックボックスなのである。
大惨事の、不本意な、不公平な。これらの特性の集合体『恐怖要因』が腹に影響する。
事実を明るみに出すことによってリスクにまつわる不安をやわらげることができると考えるのは間違っている。
腹で判断するのだから。

2011年10月7日金曜日

ブレイン・ルール


ジョン・メディナ

ブレイン・ルール


いわゆる、脳科学モノです。

科学の世界で証明されている研究成果だけをもとにして、

シンプルだけどとっても強力な脳の仕組みを

12個の「ブレイン・ルール」として紹介しています。


脳科学での説明ってなんとなく、説得力がありますが、

個人的には、脳科学的に病態を説明できたとしても、

それが実際の人間の行動にまで影響力があるかは、懐疑的です。

というわけで、本書の内容も、話半分で読んでましたが、

プレゼンテーションが上手なので、読み物として、楽しめます。


以下は、読んできて、個人的に気になったところです。

ルール1:運動;運動で能力がアップする

週に数回、20-30分の有酸素運動をする。


ルール4:注意

ひとつの課題に集中して当たれない場合、

その課題を完了するのに時間が50%も余分にかかることが分かった。

若い人は課題の切り替えが割合うまいだけ。マルチタスクはできない。

10分間たつと聴き手の注意はどこかへ行ってしまう。

それでも、体験談を話したり、感情をかきたてる出来事をはさむと、聴き手の心をとらえておける。


ルール5:短期記憶;繰り返し覚える

学習したものがそのまま覚えられるかどうかを左右するできごとのほとんどは、

学習の最終の数秒に起こる。

この最初の瞬間に記憶を精緻にコード化すればするほど、記憶は強固になる。


ルール6:長期記憶;おぼえてもなお繰り返す

ほとんどの記憶は数分以内に消えてしまうが、

壊れやすい期間を生き延びた記憶は、時間とともに強化される。

長期記憶をもっと信頼できるものにするには、新しい情報を徐々に組み入れ、

時間の間隔をあけて繰り返すといい。


ルール7:睡眠

必要とする睡眠の量やどの時間帯に睡眠をとりたいかは、ひとによって違う。

でも、午後のお昼寝を求める生物学的な衝動は、誰もが持っている。

睡眠不足だと、注意や実行機能、作業記憶、気分、数量的能力、論理的推論能力、

さらには運動の器用さがそこなわれる


ルール8:ストレス

個人の立場からすると、もっとも悪いストレスは、問題を制御できないと感じること、

すなわち無力感を覚えること

感情面でのストレスは、子供が学校で学習する能力や、職場での社員の生産性など、

社会全般にわたって多大な影響を与える


ルール10:視覚;視覚はどんな感覚も打ち負かす

視覚は、他のどの感覚よりも勢力が強く、脳の資源の半分を使っている

学習や記憶が最も進むのは絵を使う場合だ。文章や口頭で伝える場合ではない。